メア先輩は魔女!
汐屋キトリ
プロローグ
この高校には、魔女がいる。
「雨宮、知ってるか? うちの高校の噂!」
机に突っ伏していたところを大声で叩き起こされた彼――
「日比谷。起こすなって言ったでしょ」
「だって、面白い話を聞いたんだ! 気になるだろ?」
律月が胡乱げな視線を送ると、友人――
律月は亜麻色もヘーゼルもどんな色なのか分からなかったが、わざわざ聞くほど知りたいわけでもなかったし、どうせ日比谷もよく分かっていないだろうと思った。
「魔法ってのも面白そうだけど……そんな絶世の美女がいるならさ、ぜひお目にかかりたいよな!」
「興味ない。眉唾すぎるし」
「つまんないやつ!」
調子の良いことを言う日比谷は、つれない態度の律月に文句を言い、その話題は終了する。
社交的な日比谷と、常に気怠げな律月。正反対の二人は小中高を同じくしている、中学の時からの気のおけない親友同士であった。
*
律月は運の悪いことに、新学期初日から日直になってしまった。それもこれも、「雨宮」という苗字のせいだ。担任からの頼みが無駄に多かったせいで、クラスメイトが下校してから三十分経ってようやく仕事が終わる。律月は自分の机に戻るとリュックに荷物をまとめた。
「ふぎゃっ!!」
突然、廊下から蛙がひしゃげたかのような声が聞こえた。
この珍妙な声が蛙のものではなく仮に人間だとしたら、流石に様子を確認してやるべきだろう。そう考える程度の良心は持ち合わせていた。
心配半分、興味半分で廊下に顔を出した彼は、目を見張ることとなる。
律月は理解した。亜麻色とは、金色とも茶色ともつかない淡い色であり、ヘーゼルは、茶色にスポイトで淡い緑を落としたような、不思議な色であることを。
何故分かったのかという答えは、視線の先にあった。
透き通るような白い肌、艶めく亜麻色の髪、ヘーゼルの瞳。
「うぐぁ……いったぁ……」
噂の”
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます