昭和耳長物語

猫町大五

第0話 

「悪いが、早速初任務だ」

 帝都・参謀本部。舶来の男が上官の男から、黙って指示を聞いていた。

「わざわざ外地から呼び戻したのは他でもない。私の懐刀として、一役立ってもらいたいからだ、少尉」

「何か、少将」  

 どこか突き放した、ともすれば厭世的な声が返る。上官に対する態度としては不適だが、少将と呼ばれた男は気にせず続けた。

「護衛任務だ。対象者へ近づく外敵を排除せよ」

「……委細は」

「書面にて説明する。だがまあ、少し話をしておいてやろう。いくら貴様とて、得体の知れん護衛対象など気味悪いだろうからな」 「人間であれば、問題ありません。……万一の事態の、裁量権さえ頂ければ」

「今までの連中とは違うのだ。後者は認めるが……まあ、無駄であろうし、前者についても、素直に首肯できはしない」

「は?」

「ほう、貴様も斯様な顔をするのだな?」

 怪訝な顔をする男を面白そうに見やりながら、言葉を発した。


「貴様、耳長族エールフを知っておるか?」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る