4日目
第10話
いよいよ今日が、カイルへの告白の返事だ。
そもそも、会えるかどうかもわからないけど。
(はぁ、どうしよう。カイルのことどう思ってるかわからないよー)
絵を描きながらも、頭の中にはその事ばかり。
『カイルへの気持ちを考えるには今がまさに丁度いいじゃない。例えばそう、離れてみてどう?』
フレアおばさんに問われた事を思い出す。
(カイルがそばにいない。ーーー寂しい)
『もう二度と会えないとしたら?』
(ーーそんなの嫌)
『カイルに告白されて嫌だった?』
(ーーううん。嫌じゃない。むしろ......)
『エレンちゃんは、どうしたい?』
(私はーー)
フレアおばさんに、お店によって欲しいと言われていたので、事前に渡された合鍵で裏口から店内へ入る。
まだ、お店のシャッターは閉まっている。
「遅くなりました。フレアおばさん?」
店の主に声をかけるが、返答はない。二階の部屋へも声をかけるが、静かなままだ。
「出掛けてるのかな?」
その時、レジカウンターから物音がして思わず身構える。
「ーーエレン?」
現れたのは、カイルだった。
「カ、カイル?!なんでここにいるの?!!」
「なんでって、エレンをここに呼んだからって言われたから、会いに来た」
「フレアおばさんに会ったの?」
「会った、つーかその様子じゃ知らなさそうだな。あの人、父上の姉君だから、城への出入りなんて自由だぞ」
「ええぇぇぇ?!」
「今頃、父上はこっ酷く叱られてるぜ。フレアさんには頭が上がらないからな」
「そんな事、一言も......ってどこから出てきたのよ」
「地下から。父上も知らない抜け道を通ってきた。つーか、久しぶりに会ったのに、反応が薄いな」
「十分驚いてるわよ。久しぶりっていっても、1日顔を合わせなかったくらいじゃない」
「そうだな。けど、一日もエレンに会わない時はなかった。 初めてだ。こんなにも遠くに感じるなんてな」
「それはこっちのセリフよ」
「フレアさんから、話を聞いたんだってな。悪かった。いままで隠してて」
カイルはレジカウンターから出てくると、私の前で立ち止まった。
「ううん。そのことは気にしてないけど」
「けど?」
私はカイルの足を思いっきり踏んだ。
「ーーっいって!!毎回毎回同じところを〜っ!!」
「せめて、私に一言残してくれても良かったんじゃないの?どんだけ心配したと思ってるのよ!突然居なくならないでよ!これ以上、大切な人達に置いてかれるのは......嫌なの」
「エレン......ごめん、本当にごめん。俺はお前を泣かせたくないのに」
背中に腕を回され、そっと、抱き締められる。
「ーー私、考えたの。カイルのことどう想ってるのか」
「うん」
「意地悪で、口が悪くて、私のことが本当に好きなのかどうかさえ怪しいけど」
「まさか、疑ってるのかよ」
「フレアおばさんが言ってた。好きな子には意地悪したくなるんだって」
「......」
「でも、意地悪だったけど。時々優しいときもあった。いつも、そばにいてくれた。だから、カイルがもう隣に居なくなるのが、とても寂しくて、嫌で。カイルに会いたい、また口喧嘩したいっておもったの。きっと、これが“好き”なんだって気がついたの」
「......」
「ーーカイル聞いてる?告白の返事したんですけど」
「聞いてる。けど、もう一回ちゃんと俺の目を見て言ってほしい。」
カイルは抱きしめていた腕を緩め、私と視線を合わせる。
「はい。どうぞ」
「ーーもう。カイルのことが、好きです」
カイルの顔が見る見るうちに赤くなる。
「何照れてるのよ」
「うっせぇ。お前が可愛いのが悪い」
「な、何言ってるのよ!」
「よし、じゃあ、両想いになったことだし、良いよな?」
「え、え、何が?」
「何って、誕生日プレゼント、エレンが欲しいって言った」
「はぁああ?まってまってまって!!なんでそうなるのよ?!しかも誕生日は明日でしょ?!」
「明日なら良いのかよ?」
「明日でもダメ!!そういう問題じゃないの!!まだ、付き合ってもないのよ?!」
「付き合いも何も、結婚するんだから良いだろう」
「け、けけ結婚?!」
「そ。明日の式典でエレンが婚約者だってこと公表するから。あ、ちゃんと父上にも許可取ったから安心しろよ?」
「えっ!?何で勝手に話が進んでるのよ!!私の意思は?!美大を卒業して、画家になる夢は?!」
「卒業も、画家になる夢も今まで通り好きなように出来る。取り敢えずーーー黙って俺に食われろ」
「こらっ!カイル!いい加減におし!!」
こ気味良い音が、カイルの頭を叩いた。
「フレアおばさーん!!!」
end
Acanthus(アカンサス) 牟牟(むぼう) @3s10ry-rock_home
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