第7話 意識はされず
「えーっと、銀貨が四枚に銅貨十二枚ね」
パルテさんと別れた後ボク達は特に目的もなく街を彷徨っていた。
「それってどれくらいの価値なの?」
「そうね。物価とかも考えて……日本の通貨で合わせるなら銅貨が千円。銀貨が一万円くらいかしら?」
四万五千円か……二人なら数日は暮らせそうだけど……それ以外無一文のボク達にとっては心細いな。
「ともかく当面の目的はまずお金を集めることね。冥矢君はもっとこの世界について知りたいんでしょ?」
「うん。向こうではあまり外に出れなかったし、こっちでは色んな所に行って綺麗な景色を見たり、美味しいものを食べたりしたいな」
「旅をするにはお金も必要だからね……パルテの言う通り冒険者ギルドが一番手っ取り早そうね」
色々考えている内に段々とお腹が空いてきてグゥ〜と腹の音が鳴ってしまう。
「ご、ごめんまたお腹空いちゃって……」
「いいわよ。魚を食べたのだってもう数時間前だし、かなり歩いたからね。適当な所で夕飯にしましょうか!」
ボク達はとりあえず目についたレストランに足を運び、案内された席に座る。
店内は木造の雰囲気あるお店で、そこでボク達はパスタとスープを注文する。しばらくして二枚のお盆が運ばれてくる。
「わぁ〜美味しそうね!」
運ばれてきたのは色艶の良い貝が入ったパスタに魚の切り身が入っている魚介出汁を使っていると思われるスープだ。
まずボクはスープに口をつける。汁は魚の味がよく染み込んでいて、調味料の味か塩気も感じられる。魚の切り身は食べ応えがあり身が詰まってて満足できる質だ。
次にパスタに手を伸ばす。塩胡椒やハーブが絡まった麺を頬張ると味だけでなく良い匂いが口内に広がる。
「あっ、そういえば……ステータスオープン」
料理を八割ほど食いかけた所でボクは変化があるかもとステータスを表示させる。
LV 04
HP 181/181
MP94/94
力34
魔力22
素早さ34
防御17
魔法抵抗19
所持スキル
《喰らい人》
《漁夫の鱗》
レベルが上がり、例の鱗を出すスキルをまた取得している。やはり仮説は間違っていないようだ。
「冥矢君また強くなったんだね……はぁ。私も強くならないとなぁ……旅をするなら魔物と遭遇することもあるだろうし」
「セリシアのステータスはどのくらいなの?」
「女神の力も抜けてるし大分弱ってると思うけど……ステータスオープン」
セリシアは他のお客さんから見えない角度で光の粒子を集めてカードを生成し例の言葉を唱える。
LV 03
HP 122/122
MP137/137
力14
魔力49
素早さ19
防御12
魔法抵抗27
所持スキル
《癒し手》
《天翼》
「うわぁ……予想以上に弱体化してるわね」
「あれ? あの本から光を出すやつは?」
「あれは私自身じゃなくて本自体の能力ね。使えるのは私だけだろうけど……どのみちあれの使用も制限がかかっててそんなに物を出したり魔法を使ったりはできないわ」
セリシアはあの赤い背表紙の本を開き小型のナイフを一本生成する。
「これくらいの武器とかを生み出すことはまだできるけどね」
「この状態で魔物と出会したらただじゃ済まないな……」
「そうでもないわよ。さっきのサラマンダーならともかく、弱い魔物ならなんとかなるわ。ゴブリンとかオークとかならね」
「じゃあしばらくはその弱い魔物の討伐依頼? っていうのをこなして実力をつけていく感じ?」
「それがベストね。今日はもう良い時間だし、明日の為に武具を揃えてから宿で休みましょうか」
ボク達は料理を食べ終えてからお店を出て違うお店で道具を揃えてから宿に向かい一室を借りる。
「えっと……何で同じ部屋にしたの?」
「え? いやお金も余裕があるわけじゃないしこっちの方が安いから……嫌だった?」
「別にそういうわけじゃ……」
やはりというかセリシアはボクのことを異性として見ていない。ボク自身もいじめられて孤独だったせいか恋愛感情はないので人のことは言えないが、理解はしているのでなんだか複雑な気持ちだ。
「なら良かった! じゃあ今買ってきたものを確認しましょう!」
セリシアはボクの意図を汲み取らず買ってきたものを床に敷いた布の上に広げる。
「まず冥矢君にはこれね!」
手のひらに収まるサイズの円柱状の道具を渡される。青色の綺麗な石が嵌め込まれており手に持った瞬間ひんやりとした感触が伝わってくる。
「これは確か状況に応じて色んな武器に変わってくれるんだったよね?」
「そうよ。じゃあ……この要らない布を切ってみて」
ボクがよし切ろうと思うのと同時に円柱の先が変形し輝く銀色の切先が飛び出てくる。
次の更新予定
2024年12月12日 19:00
喰らうボクとお姉さん属性の女神様と異世界と。 ニゲル @bbrda
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