第6話 都市アルベーラ
「どうしたんだ?」
何が起こったのか分からず困惑するボク達の合間からパルテさんが覗き込みボクのステータスを確認する。
「《喰らう者》? 見たことのないスキルだな……それがどうかしたのか?」
「えっと……ボクの見立てだと食べたモノのスキルを身につけてついでにレベルも上げられるとかだと思ったんですけど……」
実際先程の戦闘の感覚がまだ残っているので鱗や炎を出してみようとしたものの上手くいかない。
「ねぇもしかして……食べたもののスキルを"一時的に"使用できるようになるんじゃないの?」
「なるほど……では試しにサラマンダーの肉でも少し食べてみるか」
パルテさんは皮を剥ぎ終わったところから少し肉を抉り、それを火属性魔法で炙りボクに差し出す。
トカゲの肉なので躊躇いの気持ちがあるが匂いは悪くない。一思いに目の前の肉を一口で頬張る。
「ほいひぃれす」
「それは良かった。さてステータス画面は……」
肉汁が口の中に広がり喉を通るのと同時にステータス画面に《龍炎》の文字が追加される。
「パルテさんが言った通りですね!」
「あぁ……それにしても珍しいスキルだな。ちなみに君の方はどんなスキルなんだ?」
「わ、私のはただの光属性魔法ですね……光の球を操るしがないものですよあはは……」
女神の力についてこの世界の人間に言うわけにはいかないのか、セリシアは言葉を濁しステータスを表示させない。
「そうか。まぁ珍しいスキルくらいあるか。とにかく自分のスキルについてよく知れて良かったな」
パルテさんは特に詮索などしてこず皮剥ぎを再開する。
素材回収は案外すぐ終わり、ボク達はパルテさんに案内されて街へと向かう。
「そういえば二人はどうして旅をしているんだ? セリシア君は二十くらいに見えるが、少年は恐らく十五もいってないだろう?」
「私達はちょっと世界を冒険してみたくて……ね? 冥矢君!」
セリシアが貼り付けた笑みを浮かべこちらに話を合わせるようアイコンタクトを飛ばす。
「う、うんそうなんだ……」
「そうか。最近は魔物だけでなく魔族の活動も活発になっている。くれぐれも気をつけてくれよ」
「魔族……?」
「魔族を知らないのか?」
魔物とはまた違う単語につい聞き返すが、彼女はそれを知らないということに目を見開き虚を突かれる。
「ご、ごめんなさい私達は人との交流が少ない田舎で生活してたから世情には疎くて……」
「そうか。戦争などとは程遠い場所だったんだな」
「戦争? その魔族っていうのと戦争をしてるんですか?」
「あぁそうだ。魔族とは額に角を生やした知能の高い二足歩行型の生物を指し、凶悪で残忍な奴らなんだ。
人間は長いことこの魔族と争っていて、今も各地で魔族による被害報告が上がっている」
話を聞いているだけで自然と拳に力が入る。知能があるというのにそんな残酷なことを平気でできてしまうなんて、被害を受けた人の気持ちを考えることができないのだろうか。
「まぁ君達も遭遇したら戦わずすぐに逃げた方が良い。人の前に出てくるような魔族はまず間違いなく強者だろうからな」
それからはパルテさんから色々とこの世界について教えてもらい、しばらく歩き街が見えてくる。
ボク達は門の前まで行きパルテさんが門番らしき人に話しかけに行く。
「おぉ早かったなパルテ。それでそっちの二人は?」
「魔物退治を手伝ってくれた旅の者だ。通してもらえるか?」
「まぁそれはあいつら次第だな。おい軽い荷物検査するからこっち来い」
ボクとセリシアは門番の所まで行き、軽く手荷物を調べられる。
「特に怪しい物はないな。変装した魔族でもなさそうだし通っていいぞ」
何事もなく事を終え、ボク達は門を潜り街の中に入る。
石で作られた道に中西風の建物。街を走る馬車に日本では見ない異国の服装。
これら全てがボクの瞳に新鮮に映り込む。
「ここが都市アルベーラだ。何か特別なものがあるというわけではないが、旅に必要な物は大体揃うと思うし、旅の資金を稼ぎたいなら冒険者ギルドとかもあるぞ」
「冒険者ギルド……?」
「簡単に言うと依頼を受けて報酬を貰うところよ」
なるほどこっちにはそういうのもあるのか。地球でいうところの日雇いバイトみたいなものなのかな?
「ではわたしはギルドに行って魔物の素材を換金してくるよ。君達も手伝ってくれたわけだし、これは謝礼だ。気にせず受け取ってくれ」
パルテさんは硬貨を何枚か袋に入れてこちらに渡してくれる。
「ではまたどこかで会おう」
そしてボク達と別れ彼女は冒険者ギルドへと向かっていくのだった。
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