第5話 国が動く危険人物の正体は…
私は松田君と話し、彼の態度が気に食わないということで感情的に言ってしまい、改めて先日助けてくれたお礼を言うのを完全に忘れていて少し自己嫌悪に陥っていた。
下校して直ぐに、執事から父の部屋に行くように言われた。
白井財閥系のトップとして日頃から忙しくしている父が、下校して直ぐに家にいる事が珍しいなと思ったのと、呼ばれた理由は昨日の事件があったからだと推察した。
「おかえり、茜」
「うん♪ただいま、パパ」
私の母は、幼いころに亡くなり父一人しか家族はいないので、自分でも分かっているが少しファザコン気味ではあると自覚している。
父も私の事を常々気遣ってくれてるのは理解していた。バイトするときに猛反対されたが……。
「まずは昨日のコンビニ強盗事件だが、大変だったな。私としては、茜の身に何も無くて一安心だ」
「クラスの男子生徒が犯人を気絶させてくれたので、私が怖い思いをするだけで済んだわ……」
「……バイトを始める前にした幾つかの約束があったと思うが、覚えているね?」
「そうね、覚えているわ。店長含めて私の身分がバレたんだから、バイトは昨日で辞めると店長に言っおいたわ!」
「そうか……。なら良かった。茜が社会勉強という理由で始めたバイトが、この様な形で終わってしまうのは少し悔やまれるがね」
パパが少し残念そうな顔をしていた。
私としても社会勉強という気持ちももちろんあったが、それは建前だ。
本当はパパの誕生日プレゼントを購入するためであった。私が稼いだお金でプレゼントを購入したいと思い始めたバイトなのだ。
そして、そのお金はギリギリ予定の品を購入出来るだけ貯まっているので問題は無かった。
今日早く帰ってきてくれたのは、私を心配してくれたためだと思うと少し嬉しい気持ちになり、ニヤニヤと笑みを浮かべた。
そんな私も見ながらパパは続けて真面目な顔と声で言った。
「茜、まずはこの資料を見てくれ」
パパはそう言って、資料を取り出してデスクの上に置いた。
私は驚いて声をあげた。
「これって……」
そこにあったのは一人の学生の経歴で、今朝怒鳴った相手である松田亮なのだ。
「……彼がどうしたのですか?」
「先日、コンビニ強盗を倒した男子生徒だ。そこにある経歴だが、すべて嘘だ」
「え……」
私は、再び資料に目を通す。
特段変わった内容ではなかった。特徴をあげるなら、アメリカで暮らしていたということくらいだ。
「彼はアメリカで暮らしていたのは間違いないがね。私は、彼が転校してくることを知っていた。そして私が茜と彼を一緒のクラスにしたんだ」
「な、なんで……もしかして彼は私の婚約者なの?」
今までパパから婚約者の紹介を何度かされたが、私は興味が無かったので会う事すらせずにお断りをしていた。
「いや違うよ。彼の転校については最初のこと日本政府が話を進めていた。そこで、転校先を指定したのが私だ。これは総理すらもこの話に関わっている、重要であり極秘な案だ」
「な……彼は危険人物ということなの?」
「いや、普通に過ごしていれば特に問題はないだろう」
一人の学生のために国が動いているという事実に私は衝撃を受けた。
そして彼が何者なのかが気になった。
「彼は何者なの?」
「それは言えない……。茜はまだ白井財閥を継ぐには若すぎるからね。一つ言えることは、この世の中は茜が想像する以上のことが起きているということだけだ」
「……」
「驚くのは無理がないね。茜には松田君をフォロ―して欲しいんだ。彼ってクラスメイトと距離感があるだろ?」
「え……でも今朝色々言っちゃいました」
「大丈夫だよ。彼はそんなに小さい器じゃないさ。茜の毒舌くらい問題なく受け入れてくれるよ」
パパはニッコリと笑っていた。
恐らく今朝私が言った内容も知っているのだろう。
「分かったわ……。明日から少しずつ話しかけてみるわ」
「そうしてくれ。彼も喜ぶと思うから!」
パパの部屋から出た私は自室で色々考えていた。
松田君は何者?パパは何をさせたいの?国が動くって何をしたの?
色々考えても正解は出てこない。
ならば私が松田君と一緒に学生生活を過ごして、知っていけばいいだけだと。
幸いパパは松田君と仲良くしろと言っているのだから、遠回しに私に真実を自分で探せと言っているのだろう。
「……松田君ってラーメンが好きって言ってたわね。そこから話してみようかしら……」
私も友人がいないので、何を話せばいいのかが分らなかったので少し明日からの学校生活に不安を覚えた。
伝説の暗殺者が事件を解決してくれるそうですよ! @sige02
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