第31話 家探しとトラブル

「というワケでいい物件知らない!?」


「アタシが知ってるワケないでしょ。家なんて探した事ないんだから」


 という事はエリザも宿暮らしかぁ。

 うーん、家を買うお金はあるのに探す手段がない。

 

 普通逆だよね。 

 面白い状況だ~。


「あ、あの……家でしたら知り合いに詳しい方がいますよ?」


「おぉ!!」


 とか悩んでいたらリサちゃんが最高の助け舟を出してくれた。


「さっすがギルド職員!! 頼りになるじゃな~い!!」


「リサは顔が広いからね~!! ウチにも色んな人紹介してもらったし」


「マスターの役に立ってる。だから凄くいい人」


「え、えへへ……」


 女子達から絶賛の誉め言葉を貰って照れている。

 可愛い。


「よーし!! 早速向お……」


「マスター」


「ん?」


 そのままの勢いに任せて家を紹介してくれる人の所へ行こうとした時。

 オルルが服の裾をちょいちょいと引っ張る。


「お腹空いた」


「……ご飯食べてからでいい?」


 そういえばお昼もまだだったね。

 新しい子も増えたし、今日は贅沢にいっちゃおう!!

 家は逃げないしね!!

 

 ◇◇◇


「これでいい家を紹介して?」


「はっ、白金貨ぁ!? ほ、ほんもの……ほんもの……」


「いきなり出すんじゃないわよ!! 心臓壊れるでしょ!?」

 

 お昼をしっかり食べた後。

 僕達はリサちゃんが紹介してくれた人の所へ行き、早速交渉を始めた。

 

 僕としては「大金はあるから思いっきりこーい!!」って感じだったんだけど、あんまよくなかったみたい。

 白金貨ってそんなに貴重なんだね。


「いきなりすみませんバーンドさん。この方はかなり稼げる冒険者なので、それなりにいい家を用意して頂けると……」


「稼げるなんて照れるなぁ」


「リサちゃんが言うなら大丈夫なのだろう……わかった」


 お、結構すんなり行きそう?

 家探しって、あーでもないこーでもないって感じでグチグチ交渉するものだと思ったけど。 


 今回の場合、予算の心配はいらない。

 なんなら立地と条件さえ整えば、すぐに買えちゃう!!


 ”高級な家をまるごと買ってみたー”なんて、前世だったら動画にして大バズリしてそう。


「こことかどうかな?」


「んー?」


 紹介されたのは……普通の家?

 二階建てでそれなりの広さがある、かなり大きめの家だ。


 でも白金貨の前では少しかすむような……


「ここは色んな商店に近くて教会もすぐ側にある。更に広いから二人を雇うのにも最適な場所だ」


「でも僕達の家にしてはショボイような」


「お金は持っておくに越したことはない。新しい事を始めるのに保険はかけておいて損はないよ?」


「おぉ!!」


 ここまで気を使ってくれるんだ!!

 バーンドさんだっけ?

 治安の悪いこの世界の住人とは思えないくらいすっごくいい人じゃん!!

 

「じゃあここにする!! 決まりだー!!」


「早いわよ!! まずは内見して配置とか色々見てからにしなさい!!」


「あーい……」


 ここは勢いで行けなかった。

 まぁノリと勢いばかりの僕を抑えてくれるのは結構助かってるんだけどね。


「愉快な人達だな。これは私としても気合を……」


「バーンドさん大変だ!!」


 早速家に向かおうとした時。

 一人の男が扉をバーン!!と開けて入ってきた。


「ボール、そんなに慌ててどうしたんだ?」


「スラムのヤツらが俺らが管理している物件に住み着きやがった!!」


「なんだと!?」


 スラムが?

 なーんか大変そうな匂いかな?


「場所は……なんてこった、さっき紹介した家じゃないか……」


「えぇ!?」


「嘘でしょ!? こんな最悪のタイミングで……」


 おいおいおい。

 まさか僕達の家(予定)に住み着くなんて。

 空気読めないなぁ。


「ど、どうしましょうか。スラムの人達って妙に結束が固くて追い返すのが大変ですし」


「んー、手っ取り早く他の家を探すのもありじゃないっすか?」


「リナちゃんの言うとおりだけど……」


 代わりの物件を探すのも一つの手。

 実際、そっちの方が手っ取り早くて簡単。


 だけどなぁ。

 僕はあの家に興味を持って、あの家に住んでいる気持ちになっているのに。

 

 邪魔されたような気がして納得できない。


「リオ」


「マスター」


「うん、わかってる」


 だったらやる事は一つ。

 というか僕達なら絶対にやる。


「あのさぁ、スラム民が勝手に住み着いた家なんだけど……僕達でなんとかしていい?」


「えぇ!?」


 僕達でスラム民を追い出そう。

 それしかない。


「そりゃありがたいが……こっちの不手際なんだから、無視しても構わんよ?」


「やだね。あの家に興味持ったの邪魔されてすっげぇムカついたし!!」


「は、はぁ……」


 バーンドは悪くない。

 悪いのは勝手に住み着いて勝手に迷惑かけてるスラム民だ!!

 僕の気分も害したし絶対許さない!!


「ねぇねぇおじさん? 報酬とかはいらないんだけどぉ、追い出したらちょっぴりオマケが欲しいなぁ♡」


「ひ、費用を三割減らして、戦いで発生した修繕費もこちらが受け持つのは?」


「最高。ありがと♡」


 そしてちゃっかり交渉しているエリザ。

 相変わらず可愛いなぁ。

 僕にもそれやってよ何でも買うから。 


「あざと。ウケる」


「面白いよねー」


「二人とも聞こえてるわよぉ……!?」


 ただ同性からするとまた違う捉え方をするらしい。

 面白いね。


「マスター、どれくらいやっていい?」


「家壊さなければなんでもいいよ」


「わかった」


 ま、徹底的にやろう!!

 汚物は全員消毒だー!!

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ハードモードなゲーム世界に転生したけど、【スキルコピー】の隠し効果で自由な人生を楽しんでいく 早乙女らいか @kasachi-raien

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