転生した無能は最強格、捨てられた元貴族ですがなにか?〜第一正妻を自称する悪魔の姉パワーが最強すぎていつだって俺はモブキャラ同然。そんな俺が魔王を目指すハメになった話〜
冬のケン
プロローグ
これは人族と魔族――両族の争いが激化した前後の物語。
かつて世界を災厄に導いた少年がいた。
女神と呼ばれる超越した存在が定めた運命を捻じ曲げ、秩序そのものを崩壊させたのだ。
それを良しと思う人々。
はたまたそれを良しと思わない者もいる。
今となっては少年とその側にいた悪魔によってどんな存在であろうと干渉を許さない場所となったこの世界。
すべては思惑通りとなったのだ。
少年は別世界からの転生者だった。
しかしこの世界で貴族として生まれたものの、とある悪魔の策略により無能だと蔑まれ、赤子だったにも関わらず大樹の下に捨てられたのだ。
もちろん計算済みの悪魔は少年を自分好みに育て上げようとする。
一度この世界を滅ぼし、創造するために。
だが、少年は強い信念を持っていた。
自分の理想とする優しい世界を実現する、そんな信念を。
それもこれも前世の記憶があったからこそ。
少年にとっては、異世界とも呼べるこの世界はなんとも醜いものだった。そんな世界で何度も何度も悲惨とも思えるような辛い出来事を身を以て体験することになる。
だが、決して挫けることはなかった。
少年こそ俗に言う勇者に相応しい人間。
その姿を見た悪魔はいくら考えても理解できない感情が自身に芽生えたのだと、ここで初めて知った。
そして、悪魔はとうとう決意する。
未知の力を持つ者を化け物扱いし、場合によっては利用する人族の勇者などではなく、先の行く末をより良いものとする信念ある魔王として少年を育て上げよう、と。
しかし、それは決して簡単なものではなかった。
悪魔は策を巡らし、少年に都合の良い嘘を淡々と並び立てる。それに少年のためならばと、悪魔は大きな犠牲も払い続けた。
もう後戻りはできない。
この世界では個人の力がいくら強大であったとしても、人族と魔族、両族の激化は、超越した存在――女神が定めた運命にあったのだ。
避けようもない運命に命を賭ける、そんな少年の行動を悪魔はどうしても許せなかった。
せめて少年にだけは幸せであって欲しい。
そうでないと、グッと締め付けられるような心の苦しみが抑えられない。
だからこそ悪魔は少年にまた淡々と都合の良い嘘を並び立てる。周囲にいる人族、魔族関係なく操作するのだ。
裏切り者と呼ばれようと構わない。
化け物と呼ばれようと構わない。
それほどまでに悪魔は少年を……。
ここから語られるは、二人の変わった人生。
「無能こそ最強」を名言として後世に残し、弱々しくも、いざとなったらたくましい、その自信過剰さで魔王になっちゃった少年。
少年のためなら自身の命すら捨てても構わない、そう決意するも「やっぱり離れたくない」と国一つ滅ぼす力と策、そして嘘で何でもねじ伏せる自称第一正妻の悪魔。
そんな二人の変わった、気づけば世界を救済してた的な物語である。
リリー・スワラ著
『少年と悪魔、なぜか世界救済 序』
次の更新予定
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