□ エピローグ2 シリウスと十歳の白竜プロキオン
◇
真実が明るみになるにつれ、
シリウスは再び英雄として、返り咲いた。
宝玉眼と白竜たちの、
鮮やかな救出劇!!
彼はおちゃらけて、
なあんにも語らなかった。
しかし、
ファンたち、そして白竜の考察はおおむねこうだ。
彼は、きっと彼らに名を与えたのだ。
名前を持たぬ、
あるいは奪われた彼らに、
直感で次々と名前を授けたのだ。
シオンの文様の扱いと、ほぼ同じだ。
シリウスはトークで、それが実現できるのだ。
【名の扉】の文様、その美しいステンドグラスの埃を払い、丁寧に拭き上げ、ひとつひとつの輝きを、
巧みなトークで、相手に伝えることが出来るのだ。
深く付き合わなくても、出会ったその瞬間に。
シオンと少し違うのは、彼のそれは、深い悲しみから沸き立つ影のある色気と、どんな寒空の下でも尽きることのない無限の手の温かさなのだ。
だから、命の灯火を再び燃やすことができるのだ。
◇
あとは、幾重にも囲われた塀の一部の輪郭線を消し、天の竜の口を封じ、竜車を授けたのだろう。
それで、彼らのほとんどは、彼らの心の欲するままに、おのおのの世界へと帰っていったのだ。
◇
白竜はまことしやかな考察としてファンレターを書いた。
ファンが聴く限定の一日限りの
シリウスのプログラムは、いつもの調子だった。
陽気な音楽。笑い屋さんとのおしゃべり。
小中高生、大学生、社会人やお年寄り。
みんなのお悩み相談を、
軽妙なお喋りに乗せて届けた。自慢話には意地悪くして、自虐は慰めて、
最期は自分のことを話した。
白竜との喧嘩のくだりも、近頃はお約束だった。美人と噂される彼女にめろめろになりながら、ぷりぷり怒って、
旅行やら入院を匂わせたりしてた。
そして、
ファンの間でももはや愛弟子でお馴染み、
子犬のプロキオンからのお便りを、シリウスが読み上げた!!例の考察。
そして、
「そんなわけない。お前はいつも考えすぎっ。はい次!」
と言った。
「今は、みんなが宝玉眼で、みんなが白竜。近頃のコスモス、君、ますますお目々キラッキラだね。どうしたの。」
秘密!と、べしっと叩かれる音がした。
わはは、と笑われて曲紹介へ移った。流されたのは勧善懲悪の時代劇のテーマソングだった。立て続けに、名探偵もののアニメソングが流れた。
ファンは、それはそれは大喜びだった!
だって、なんのお便りを読み上げるのかはスタッフではなく、すべて
言及せずとも、みーんなうっすら知っていたからだ。曲も彼が選んでいた。
ファンの解釈では、ほぼ答え合わせだった。
最期に孫の歌が流れた。
◇
十歳の白竜、プロキオンは私室の寝床でばたばたした。
最っ高に幸せな夜だった!
だから、シオンの真似をした。
もう一人の大恩人。偉大なる
オロッポロッポのグラスを掲げた。
おめでとう、俺!!
おめでとう、先生!!
小窓には、
南十字星が輝いていた。
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