◆◆◆ 白馬の王子様
◆
古典中の古典。
擦り切れすぎた言葉だ。
俺は、
諜報部員なんだ。
もちろん、
仕掛ける側だって、
下手なりに散々やってきた。
そして今は、
やられる側だ。
身内の諜報部員に、
熱を上げるなんて、
バカの極みだ。
身内。
もしややられる側は、
常にそう思うんだろうか?
彼女にとっては。
最初から今まで、
俺は他人?
わからない。
(戻ればいいじゃん?)
青いちび竜の声が聞こえる。
そうなんだ。
しかしもう、
深部に食い込みすぎてた。
彼女なしじゃ、
俺の生業は成立しない。
泣きたかった。
温かくて柔らかくて、
抱きしめてる、
それは。
まがい物とは、
とてもとても思えない。
だけど、
眼の奥には、
君とは、
明らかに違う人物が透けている。
〈君は、凩に目を貸している。〉
ゾッとする。
そして、
それを捉えたとしても、
振り払うことなんて、
出来ない。
身体は燃え、
臓物は掴まれている。
君は、
もう俺が使うしかないんだ。
上はもう、
君に、
詳しい内情を、
報せることなんて、
できないだろう。
ド素人に目を貸してる、
バカな
下手を打てば、
君は消される。
だから、
すべての責任を、
俺が引き受け、
俺が指示を出すしかないのだ。
贖罪。
帳尻合わせ。
いつか、
報いを受ける日は来ると思っていた。
こんな形でくるなんて、
思っても見なかった。
薄皮だ。
握れば潰せる。
あっけないくらい。
ぐしゃり。
もちろん、
そんなことはしない。
優しく優しく、
取り扱うほかない。
だって、
酷いやつは、
もう足りてるんだから。
君の
そうして、
俺を貫くプラムの香りは、
ますます甘く甘く、
強く強くなっていくのだ。
尻餅をついた。
手のひらの下に、
白い水たまりになる、
境界線が見える。
振り返ると、
暗闇の中に、
キラリと光る鍵束。
紅玉の瞳を持つ、聖母の影。
隣には紫水晶の瞳を持つ、人型ドラゴンゾンビの影が見えた。
【名の扉】の
まだ、
この手に握られ、
鈍くだが、
光っていた。
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