第2話

気がつけば自分の部屋の天井が視界に入る。横には心配そうに此方を見る妙と先輩、オーナーの姿。


「あ!目が覚めたの?!大丈夫?!」

1番に声をかけてくれたのはやはり親友だった。

「おはよぉ…」できる限り心配させないように笑顔で話しかける。その様子に良かった良かったと泣きながら抱きついてきた。


「妙さん。俺達話さなければいけない話があるのです。」

「一回部屋から出てほしいなぁ〜!」

オーナーと先輩が妙を部屋から追い出し、話始める。

「貴方が見たあの少年は知ってると思いますが人間ではありません。」

「俺らが必死こいて倒してる世界を脅かすバケモンなんだよ」

そこからの話しは衝撃だった。

魔王と呼ばれる人物があの少年のような怪物を産み落とし世界を壊滅に導いている。

それを阻止しているのが〝クローバーの時の2人〟一人一つの鍵を持っておりその鍵を使う事により怪物が現実世界に出る前の怪物が居る異空間に行くことが出来る。異空間で倒しきれず現実世界に来ると自然災害として片付けられる事が多いが見える人にはそれが怪物の仕業だと分かるらしい。

2人は精霊と契約していて自然の力を借り怪物と戦う事が出来る…と。

そして、オーナーと先輩がこの事実を知った僕に共に戦うよう話を持ちかけてきた。

僕には理解が出来なかった。

今までの平穏な日常の裏でそんな恐ろしい事が起きているなんて。そんな恐ろしい怪物と戦えなんて僕には無理だ…でも、自分の中の何かが[親友が傷つくのを防げるかもよ?]と問いかけてくる。この言葉で僕の答えは決まった。


「やります…やらせてください。」


もう戻れない所まで来てしまったんだ。なら世界の壊滅を阻止してみせよう。


「やるとしても契約精霊が現れるまでは怪物について学んで貰います。」


契約者、2人の契約精霊は氷と炎の精霊らしい。僕はどんな契約者が現れるのだろうか。

今日はもう休もう。


眠りに付き冷たい床で目が覚める。

自分のベッドで寝たはずなのに今居る場所はあの時の異空間と言われる場所に居た。

ただこの場所に居るのでは無く、椅子に固定されていた。

どうやっても逃げれそうには無かった。藻掻いて居る時にあの時の少年が近づいてきた。あの時はちゃんと見れなかった顔が今なら見れる。

綺麗なぱっつんボブ、大きく丸い目。小さい口。

女の子と言われても違和感の無いような顔立ちをしていた。

そしてその少年が僕の胸に触れ「あぁ…やっと一つになれるね…お兄さん♡」と恍惚の表情で言ってくる。そして僕に触れる手に力を入れる。直感した(入られる)と、出来る限り足掻く、が。そんな努力が無駄だと言わんばかりに少しずつ入り込んでくる。

「んん〜〜ッ!!」

口にタコ足を入れられ満足に叫ぶ事も出来ない。

「可愛いね。可愛いね!」

そう口に出しながら徐々に入ってくる。気持ちが悪い。自分の中に怪物が侵入してくる。もう半分まで入られてしまった。

ほぼほぼ入られた時、、もう諦めてしまおう、そう思いもう何もせずに絶望に暮れていると「おい!なに亜月手ぇ出してんだよ!真!!」そう叫びながら現れたのは狼の耳に大きなふさふさな尻尾をした少年だった。

僕は味方のようなあの少年に助けを求める事しか出来ない。

「た、たすけ…」

助けを乞う言葉を遮るように真と呼ばれたタコ足の少年が答える。

「も〜邪魔しないでよぉ。伊織兄ちゃん…」

「兄ちゃんだっていつも近くで見てるじゃん。僕は駄目なの?」

兄弟らしい。だがそんな事を気にしてる余裕は無い。もう少しで全部入られてしまうのだから。

「だから辞めろって言ってるのが聞こえないのか!」

伊織と呼ばれた少年が起こりながら此方に近づいてくる。もう動かない手を必死に動かして助けを求める。

それに気づいた伊織ははっとした顔をした直後狼の姿になり僕の体からまだ出ている部分に噛みつく。この光景を見るのは2度目だ。

そして、狼に見覚えがあった。昔から時々見える狼の影と一緒だった。綺麗な澄んだ赤い目、風の抵抗を受けない綺麗な毛並み。見惚れていると、どぷん…何かが完全に自分に入った感覚がした。体が拒否反応を示す。


「うあぁぁぁ!?!」


叫び声を上げ、体が痙攣する。そして瞬く間に気を失った。少し意識が戻った時に見たのは人間の姿をした伊織が僕を抱え少し悲しそうな悔しそうな表情をしたまま何処かへと向かう。それだけだった。

次に気が付くと。自分の部屋のベッドだった。横には先程運んでくれた伊織。僕の意識が戻った事が分かった瞬間。

「大丈夫か!?」

「俺が、俺がもっと早く来てれば…」

後悔の言葉を吐露している。僕は伊織の頭に手を置き、撫でる。

「大丈夫、大丈夫だよ。ありがとね。」

伊織は驚いたが安心したように嬉しそうに頭を差し出してくる。可愛らしい。その時にガチャと扉が開く。部屋に入ってきたのはオーナーだった。

「早くも契約精霊を連れてくるとは…」

「亜月は凄いですね」

契約者、その言葉に伊織が反応を示した。「俺が亜月を守る。」と契約はその者と血を交える事らしい。2人で掌に傷を付け手を繋ぐ。その時に僕の体に変化があった。目が、耳が、人よりも良くなったのだ。人の鼓動まで聞こえる。伊織は小さくなり僕の周りをふよふよ飛んでいる。

「契約は成立だ!」

そう声がした。僕はこれからどうなってしまうのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スノードロップ 佐野佐久間 @sakuma0401

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ