第7話 オスガキとメスガキ その1
「ただいま…」
「お兄ちゃん、どうだった!?」
俺を出迎えたのは興奮した顔つきでソワソワする妹(現在中三)。お嬢様学校というものに前々から憧れがあったらしく、帰ってきたら一番に教える約束をしていた。
「あぁ、聞かせてやるよ、やるけどな、お兄ちゃん疲れちゃった。まず2時間だけ寝かして」
「今夜は寝かさないぞ♡」
「おまっ、
「へへーん」
思慮深い諸君なら既にピンと来ているだろうが、
というかそんな小ネタどうでもいいんだよ。
俺は2回の自室ベッドへと最短経路で行き、重力に身を任せ倒れ込んだ。今日は色んなことがありすぎて疲れた。にわかに意識が遠のいていくので、俺はそのまま深い眠りについた。
「お兄ちゃん、起きろ」
「へ?」
「誰か来た、お兄ちゃんを出せって言ってる」
「お兄ちゃんは昨晩プリウスに跳ねられてお空に行っちゃったと答えなさい」
「馬鹿なこと言わない!早く出てくる!」
えー。だる。誰だよこんな時間に。
と思って時計を見るとまだ7時半だったのでそれもムカついた。早い時間にも来るなよ。
俺は気だるい足で階段を降りて、玄関の扉を開ける。
「えっと、どなたです?」
そこに立っていたのは小洒落た身なりをした多分45歳くらいの人の良さそうな男と、それから、息を飲むほど美しい金髪の髪と青い目をしたスタイルのいい女子だった。多分、ハーフだ。かなり不機嫌そうなのが何となく嫌な予感がする。
「君が柊介くんかい?」
「はい、え、」
俺の返事を聞くや否や握手してくるおっさん。
「そうか、そうか、君が!…おっと失礼、引かせてしまったね。私は本日君が転校した学園の理事長を務める
諸君らも「はいはいなるほどね」となっただろう。そう、多分このおっさんが親父の言ってた道で倒れていた男だ。だとすればなんか馴れ馴れしいのも俺が命の恩人の息子だからということで合点がいく。
「あー、全て理解しました。でもまだ親父帰ってきていないんですよね、多分もうそろ帰ってくる頃かと思うんすけど…。まぁとりあえず中に上がってください。」
「すまないね、ほらソフィロア、お邪魔させてもらおう」
「チッ」
チッ?チッだと?ソフィロアと呼ばれた感じの悪い女は嫌な顔を隠そうともせず靴を脱いでズタズタ入る。いかにも甘やかされて生きてきましたって態度そのものである。
「まぁそこに座って下さい。お茶出しますんで」
「あぁ、ありがとう」
俺は二人をダイニングテーブルに座らせ、キッチンにいきヤカンに火をかける。すると二人のヒソヒソ話が火の音に紛れてうっすら聞こえてくる。
「ソフィ、いい子にしてくれるって約束しただろ?」
「無理ですわ、あんな何も考えてなさそうな男にどうして私が媚びなくちゃいけないんですの?私は一人の人間ですの。男に媚びるために生まれてきたのではありませんから。」
「はぁ…お前ってやつは…。もういいから黙って大人しくしててくれ。いるだけでいいから。」
大変そうですね、お父さん。そんな何も考えてない馬鹿女が娘だと。
「はい、粗茶ですが、どうぞ。」
「どうもどうも。柊介くん、学校はどうだった?」
「んー、まぁなんか色々すげぇなって感じでしたね。校舎は国会議事堂みたいにデカいし、いや別に行ったことはないんすけど、あと設備とか諸々も目を見張るものでした。俺には縁のなかった世界ですね」
「そっかそっか、楽しんでもらっているようで何よりだよ」
いや、楽しんではない。
俺はあえてあのきもい会のことについては一切触れなかった。なぜなら俺はこの隣いる女が風生会の人間であることを既に知っていたからだ。寝起きだからか、今の俺はやけに頭が冴えている。
『はい、やめておいた方がいいです。ぶひー。今日はいませんが、風生会にはもう1人理事長の娘がいます。ぶりぶり。その子がパパにお願いすればあなたはこの学校を否が応でも去ることになります。ぶちちち』
細部は違うかもしれんがこんなことを雨井が言っていたのを俺は朧気ながら覚えている。
とりあえず、ここは俺も穏便&適当に済まして、それからもできるだけあの会には関わらない。という方針でいこうと思っている。
「じゃあ俺親父に電話してくるんで、少し席を開けますね」
「待て、ですわ。」
気まずいので席を立った俺を呼び止める女、その青い目は何かを思い出そうと必死になっている目だ。
「あ」便秘が解消したようにスッキリした顔になると、俺を指さし、
「お前、男と抱きついてたやつですわね!」
「誤解です!誤解です!」
とんでもないことを口走りやがった。
なんで俺の青春ヒロインたちの思想だけこんなに強いの 戸惑郎 @toyasama
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