文体練習

まったくきみってやつは！/セリフ練習

まったくきみってやつは！　道を歩けばおさんぽ中の犬に声をかけるし、生垣に生えたなんかぷくぷくした実を食べるし、いつか不審者として通報されても知らないぞ。え？　もう通報されてる？　ならなおさらやめなさいよ。ぼくだってきみを庇いだてするのは限界があるんだぞ。ほらさっきだって、ちっちゃい子に泣かれただろうが。きみが腰にデラックス仮面戦隊変身ベルトを巻いて、腕に大怪盗エースのハイテク時計をつけて、挙げ句の果てにデカい飴なんか舐めてたら、そりゃあ……！　全国の幼児が嫉妬に狂うさ。何を呑気にチピチピそこらへんを歩いているんだ。普通に不審者だろうが。いい大人が見せびらかすなよ、誰もがうらやむ宝物をよ。え？　うらやましがられたい？　メンタリティが子ども向け番組に出てくる嫌な金持ちと同じだな。サイテー。違う、そうじゃないって言われてもさ、……うん。なに。ぼくに羨ましがってほしかったの。きみに羨ましがるわけないだろ、ぼくだってそれなりに大人で、自分で欲しいものを買えるんだから。きみだってそうだろう。はぁ、違うと。欲しいものは全然手に入らないと。ふうん。せーぜーがんばれば？　ね。ね？　ぼくは高いよ。