2-10 「霧刻セカイの輪廻のカルマ」 

https://kakuyomu.jp/works/16818093078961328683


◯タイトル


タイトルから具体的なイメージは汲み取れないが、セカイがカタカナ表記なのはセカイ系と言われていた概念を連想する。しかし残念ながら言葉を知っているだけでどういうものかは実際よくわかっていないのでそれ以上想像が進まない。

…あれ、もしかしてこれ「霧刻セカイ」で人名か。そう気づいてみれば最初からそう読むのが当たり前に思えてきた。


◯あらすじ


故郷を失った双子が遺跡都市で世界の謎を解く物語。

そう物語の方向を明記しているのは助かるが、謎の提示があったほうが興味が惹かれる。あらすじに書ききれないくらいには複雑か、そこは目玉ではない線もある。遺跡都市までも結構紆余曲折ありそうなのでせめて謎には触れたいがそこまで3話で届くかどうか。

順当に考えて、遺跡都市の問題から故郷を呑んだ霧に繋がるのだろう。霧に呑まれる街と聞くと有名映画を連想するが、虚無の霧という呼称には毛色の違いを感じる。誰からも忘れられてしまうとか多分そういう方向。

あと他の人名の感じだと霧刻セカイってキャラがいるわけじゃないな多分…


◯書き出し


霧に呑まれる自宅。プロローグ気づかず読み飛ばすミスをしないで済んだ。

霧に呑まれるとどうなるかは定かではないが、霧から出てきたものは無いんだろう。動物が揃って逃げ出す姿が、本能的に訴えかける不穏さが伴う異様な霧であることを映像的に示してくれる。

事故でしかないが、以前熱心にプレイしていたフリーゲーム「片道勇者」と状況が似ているのでそのBGMが頭の中で流れ出してしまう。集中力が足りてない。


◯1話


追われるように旅立つ双子。

なんだろう。全体的に感覚よりも風景の表現が頭に残り、きれいな文体してるなという印象がある。開けた場所で見る妹の後ろ姿は自然とイメージで浮かび上がり、花弁を載せて通り過ぎる風まで含めて話全体の象徴として与えられたワンシーンに思える。映像だったらここでタイトルが出ている。

「青と白のグラデーション」が短い間に3度出ているのはやや気になるが、前述のイメージもあって後々に活用するために入念に読者の中に刻みたかった言葉か。ここまでで展開の惹き込み性は強く感じないが、イメージ性が強い。というより読者を惹き込むイメージ性がある。


◯3話まで


思ったよりも話が早い。到着前に師匠のくだりなど入るかと思ったが、すぐに物語の主舞台である遺跡都市に場が移っているのは嬉しい。省略部分も読み取れる流れを挟みつつ(人によっては大変かもしれないが)、剣の腕、魔獣や師匠の手紙とあらすじで出た必要要素が自然な流れで登場する。赤の飛沫を周囲へ叩きつけるって戦闘中描写も映像的でいいなあ。

主人公の2人は喋りだしたことでプロローグの印象より幼くなったが、時折見せる子供らしさに親しみを感じる。それでいて兄の戦闘における場慣れ感には普段妹に逆らえない力関係からのギャップがあり、キャラクターの多面性に奥行きがある。そして再びイメージ性の強い風景描写といくつもの見所に緩急がある。

タイトルまでには一度とっつきにくさを感じたが、真っ当に物語としての地力が高い、相性問題なく楽しめる作品に思えた。

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