第2話

第一試合は、17ー0で試合終了となった。

これで、六日後、49校目の高校と対戦が決まった。

ホテルに帰って、美里と結衣は、部員のユニフォームをホテルのコインランドリーで洗濯をした。洗濯が終わるのを待つ間、二人は並んで座って、今日の試合のスコアを見返した。

「やっぱり、直樹先輩って凄かったですね」

結衣が、勝利の感動を思い出しながら言った。

「そうね。本当に今日のピッチングは最高だったわ」

美里も、相槌を打った。

「直樹先輩って、ほんと、カッコいいですよね。なんで部内恋愛禁止なんですか?」

結衣が口を尖らせた。

「監督が決めた事だから」

美里も結衣の意見に同感だった。

「私、この大会が終わって、直樹先輩が引退したら、告白します」

結衣が美里の顔を見て、挑発するように言った。

「美里先輩は、誰か好きな人いないんですか?」

「いないわ」

美里は、大会が終わるまでは、誰にも自分の気持ちを悟られないようにしなければいけないと思っていた。

ちょうどその話を、壁を隔てた隣の自動販売機にジュースを買いに来た、キャッチャーの三浦が聞いていて、ガッツポーズをした。

次の試合まで、近くのグランドを朝早くから半日借りてあるので、部員達はそこで、最後の練習に力を入れていた。

2試合目も、1点取られたが、9回の裏で3番の二年生が満塁ホームランを打ち、その後、4番の直樹がホームランを打って、2勝目を上げた。

3試合目は、相手も、いいピッチャーで、お互いになかなか点数が入らなかった。 

延長になり、10回の表で直樹の送りバントでランナーを返した1点で、勝つことができた。

美里は、

「松下くんなら、本当に優勝するかもしれない」

と、呟いた。

直樹は、次々と勝ち進み、美里にとっても、告白するドキドキが高まっていた。

いよいよ明日は最終日。決勝戦である。

夕飯の後の最終ミーティングで、直樹は、

「絶対に勝つ」

と宣言した。

部屋を出る時、直樹は、美里の隣を自然と歩き、

「勝ったら話がある」

と耳元で小さな声で言って、歩を早めた。

「えっ?」 

美里は、耳を疑った。

「松下くんの話って?」

美里は、直樹の言葉を頭の中で繰り返していた。

決勝の朝が来た。直樹にとっても、美里にとっても、長い十六日間だった。毎日グランドで、校歌も練習した。

甲子園に試合開始のサイレンが鳴り響いた。

優勝までのタイムリミットが迫っていた。

「頑張って」

美里は、両手を組み合わせて強く祈った。

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熱い十六日間 @rui-turuta

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