熱い十六日間
@rui-turuta
章タイトル未設定
第1話
青い空に入道雲がくっきりと形を描いていた。
ジリジリと、太陽がアスファルトを照らしていた。
本日の予想最高気温は、35℃。
高校野球、夏の甲子園大会が始まった。
高岡美里は、三年の野球部のマネージャー。美里にとっても最後の大会である。
美里もこの大会に向けて、選手と共に全力投球してきた。
美里は、優勝したら、キャプテンの松下直樹に告白しようと密かに思っている。
軽快な音楽に乗って、選手達の入場行進が始まった。
宿泊先のホテルを出る時、美里は、後輩マネージャーの石川結衣と二人で作ったお守りを、選手一人一人に
「頑張って」
と声をかけながら手渡した。
美里が直樹にお守りを渡した時、直樹は、
「ありがとう。マネージャーのおかげで、甲子園に来る事ができたよ。」
と、美里の手を握って言ってくれた。
美里は、中学の時から直樹が好きだった。美里は中学時代は、バスケ部でキャプテンをやっていたが、直樹と同じ高校に進学が決まったので、野球で高校から声を掛けられていた直樹と同じ夢を追いかけたくて、野球部のマネージャーになった。部内の恋愛は禁止なので、美里は今まで告白することもなく、三年生になってしまった。
「私こそ、ありがとう。甲子園は、ほんの一握りの人しか来られないんだから。松下くんなら、きっと勝てるよ。私、信じてる」
美里はそう言って、直樹の手を握り返した。
直樹は、地元では、名前を知らない人がいないと言っても過言ではないほど、小学生の頃から、その活躍はメディアに取り上げられていた。
第一試合を引き当てたのも、キャプテンの運がいいのか悪いのか。開会式の後の10:30から、いよいよ運命の扉が開く。とりあえず、最終日までホテルは抑えてある。
直樹は、美里が渡したお守りを、ユニフォームのズボンの後ろポケットにしまった。そして、ちゃんと結衣の手も握って、
「ありがとう。がんばるから、応援よろしく」
と言った。
美里はその姿を見て、
「私だけ特別じゃない」
と、自分に言い聞かせた。
試合開始のサイレンが球場に鳴り響いた。
相手の先攻で始まった1回表は、直樹の投球が光り、三者凡退に終わった。
スコアをつけながら、美里は小さくガッツポーズした。
1回裏の攻撃、2番バッターがフォアボールで出塁し、直樹のスリーベースヒットで1点先取した。
2回以降も相手は三者凡退が続いたが、5回表の攻撃で、不覚にもピッチャーゴロを打たれてしまった。
こちらは1回毎に2点取り、7点リードしていた。
5回裏は、キャッチャーの三浦進が、満塁ホームランを空高く打ち上げた。5回終わって11点リードしていた。甲子園では、コールドゲームがないので、引き続き6回の表が始まった。
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