第2話
「何か手伝いますか?」
詠斗は、鞄を入口に置いた。
「もう終わったんですか?」
玲奈が羨ましそうに言った。
「一人で大変そうですね」
詠斗が、机の上に広げた紙切れを見て言った。
「あとは、宝探しの地図の色を塗れば終わりなんです」
玲奈は少しホッとして言った。
「じゃあ、僕、絵の具取って来ますよ」
「ありがとう」
詠斗が絵の具を取りに行っている間に、玲奈は机の上を片付けて、地図の紙を広げた。
「もう、他の先生達みんな帰って、誰もいませんでした」
詠斗が絵の具を両手に持って部屋に戻って来た。
「そっか、もう7時回ったものね。そう言えば、お腹すいた」
玲奈が、時計を見ながら言った。
「これ終わったら、ご飯食べに行きませんか?」
詠斗が絵の具を出しながら言った。
「なら、手伝って貰うお礼に、私がご馳走するわ」
玲奈が色を塗りながら言った。
「いいんですか?じゃあ、急いでやっちゃいましょう」
詠斗は、絵も上手かった。
「詠斗先生、上手ですね」
玲奈が感心して言った。
二人は、流し台に並んで筆を洗った。
「ありがとう。お陰で早く終わったわ」
「どういたしまして。さあ、帰りましょう」
玲奈が帰り支度を始めた。
「玲奈先生、今日は歩きですか?」
「そうなの。朝、自転車がパンクしていて」
「僕、車なので、一緒に乗って行きましょう」
「ありがとう」
二人は一緒に保育園を出て、詠斗の車に乗り込んだ。
「何食べたいですか?若いから、肉かな?」
「いいですね」
詠斗が嬉しそうに言った。
「決まりっ。じゃあ、そこを右ね」
二人は玲奈の行きつけの焼き肉屋に向かった。
焼き肉屋は満席だったが、直ぐに一席空いたので、待たずに座れた。肉や野菜、ビビンバと玉子スープを一通り注文すると、直ぐに品物が来た。詠斗は、手際良く肉を焼き始めた。
「玲奈先生、今、告白してもいいですか?」
詠斗が突然切り出した。
「え?」
玲奈が箸を止めて詠斗の顔を見た。
「僕は、玲奈先生が好きです。中学の時から好きでした。僕と付き合って貰えませんか?」
「詠斗先生、ありがとう。嬉しいです。私も詠斗先生の事、いいなと思っていました。でも、私達が付き合ってること、他の先生達には内緒にしてほしいんです。約束してもらえますか?」
玲奈が考え込んで言った。
「今度こそ、由美先生に取られないようにしなくちゃ」
玲奈は、ぼそっと自分に言い聞かせた。
「わかりました。じゃあ、今日から玲奈先生は、僕の彼女ってことで」
詠斗が右手を差し出した。
「はい、よろしくお願いします」
玲奈も右手を出して詠斗の右手を握った。
翌朝、保育園に出勤すると、由美がいきなりひばり組に入ってきた。
「ねぇ、私、詠斗先生の事好きなの。お泊まり会の日に告白するから、応援してね」
由美はそう言うと、にやっと笑って部屋を出ていった。
「ふふっ」
由美の後ろ姿を見て、玲奈が冷ややかに笑った。
悪魔のような天使たち @rui-turuta
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