第2話

翌日、優羽は仕事の帰りに病院に寄った。 

「こんにちは」

慶斗が、笑顔で優羽に話しかけてきた。

「こんにちは」

優羽も笑顔で答えた。

「痛みはどうですか?」

「昨日よりは少しいい感じです」

「それは良かった」

慶斗は、バスケの話や、自分の学生時代の話をしたり、優羽に色々質問してきたり、話術に富んでいた。

「また、明日」

治療が終わると、慶斗は優羽の目を見ながら言った。

「はい」

優羽も自然に返事をした。

それから、毎日優羽は病院に治療に通った。

慶斗とは、いつも話が盛り上がり、優羽は明らかに他の患者より治療時間が長かった。

二週間が過ぎた頃、診察があり、

「大分良くなってきたので、来週から、1日置きにしましょう」

と、医師に言われた。

「あ、はい」

優羽は、少し俯いて言った。

リハビリルームから名前を呼ばれ、優羽はベッドに横になった。

慶斗が来て、いつものように、

「こんにちは」

と、優羽に声をかけた。

「こんにちは」

と言った優羽の声は、いつもより元気がなかった。

「どうしたんですか?何か元気ないなあ」

慶斗が、すぐに気付いて言った。

「今、先生に、来週から1日置きでいいって言われたから」

「そうですか。良くなってきたってことですね。」

慶斗が、ニコッと笑って言った。

「ですね。でも」

優羽は、言葉を濁した。

「でも?何ですか?」

慶斗が、優羽の顔を覗き込んだ。

「田中先生にあんまり会えなくなっちゃうから」

優羽ははにかんで下を向いた。

「ははっ。ありがとうございます。嬉しいです」

慶斗が、笑いながら言った。

「じゃあ、良かったら、明日の日曜日、映画でも行きますか?」

慶斗は足首をマッサージしながら、他の人に聞こえないように小声で、優羽の耳元で言った。

「はい」

優羽も笑顔で小さく答えた。

「映画なら、あまり歩かなくてすみますからね」

慶斗は、優羽の足を気遣って言った。

「ありがとうございます」

「じゃあ、9時に、カルテの住所に迎えに行きますよ。見たい映画決めておいて下さい。僕は、ホラー以外なら、何でもいいので」

「わかりました」

治療が終わり、優羽が帰ろうとすると、

「また、明日」

慶斗が、ウィンクしながら言った。

「はい」

優羽も笑顔で答えた。

翌日、朝9時に、慶斗は白い外車で優羽のアパートに迎えにきた。車に乗ると、

「映画、決めた?」

慶斗が、訊いてきた。

「はい」

「何?」

「映画館行ってから教えます」

「んー、まあ、いっか。これで水越さんの趣味もわかるし」

慶斗は、にやけて笑った。

映画は、コメディだった。

「面白かったね。僕も、これ見たいと思ってたんだ」

映画が終わると、慶斗が言った。

「良かった」

優羽もホッと胸を撫で下ろした。

「少し歩いても大丈夫?隣のレストランでお昼食べない?」

まだ歩き方がぎこちない優羽を気遣って、慶斗が訊いた。

「はい。全然大丈夫です」

映画館の隣のレストランは、イタリアンだった。パスタがもちもちしていて美味しかった。

「ご馳走様でした」

車に乗ると、優羽は慶斗に向かって頭を下げた。

「こちらこそ、楽しい時間をありがとう」

慶斗が、爽やかな笑顔で言った。

「また誘ってもいいかな?」

「はい。是非」

優羽が嬉しそうに言った。

それから、優羽の病院通いは、1日置きが3日置き、1週間置きになり、3ヶ月過ぎて、走れるようになった。

バスケの練習にも行けるようになった。

「今日でいいでしょう」

診察室で、医師が優羽に言った。

「ありがとうございました」

優羽は診察室を出ると、リハビリルームに向かった。すぐに慶斗がきた。

「こんにちは。今日で終わりですね」

慶斗がにこやかに言った。

「はい」

優羽も、笑顔で言った。

治療が終わり、優羽が立ち上がると、

「また、明日」

慶斗が言った。

「はい」

優羽も答えた。

翌日、二人は海にドライブにきた。

海の見える喫茶店で、まったりと波の音を聞いている。

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また、明日。 @rui-turuta

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