第6話 -3
ウーウー、さっきから気になっている、唸り声が。ウーウーと、特にペットを飼い始めた訳ではない、ウーウー、とテーブルの向こうから顔半分を出して、カリカリと今度は、テーブルを齧かじってるのか、掻き毟むしってるのか、削っているのか、唸り声と共に二重奏となって、このオンボロの船の唯一くつろげる、古びてはいるが、リビングで、彼女はさっきから唸り声と、カリカリ、テーブルをかじっている、齧かじっている!ただでさえあちこち手直ししなければならないほどの、修理箇所が多いのに、これ以上増やさないでほしいのだが、お構いなし。ずっと睨みながら、ようやく彼女は人の言葉を発した。お姫様たちどうするんですか!一人知らない間に、女の子が増えてる!と宣のたまった。そしてまた、唸り声と、削る音の続きに取りかかった。俺は、前に言っただろう、特に問題はないだろうし、女の子は完全にこっちのせいじゃない、勝手に乗り込んできたんだから。と、何度も同じことを言ったのに、納得していない風で、彼女は気に入らないみたいだ。まだじっとこっちを見ている、ウーと言いながらこっちをみている、怒っているモードのせいで、いつもの俺を襲う機能は順位が下位になっているようだ。テーブルの向こうでウー、と言いながら、まだこっちをみている。テーブルをかじりながら。
数刻前、あの後、ここにいればいいと言った後、お姫様たちの、荷物の整理があると聞いたので、検疫の為、ポッドの貨物室を見ることになった。貨物室のエアロックを開けた途端、ひらひらと蝶が一匹出ていき、どこかに消えていった、虫が入り込んだので、十分な消毒とモニタリングを、AIアンドロイドの彼女にモニタリングさせた。その時、荷物の長持の奥から、ヘルメットを外している、宇宙服を着た、大きな赤い髪飾りを付けた少女を発見した。少女は、しばらく彼女と俺を見比べるように見て、視線を俺たちの間に移し、侍女を見ると、いきなり何か叫んで、侍女の方に駆け寄って抱き着き大声で泣いていた。俺は状況が飲み込めないでいたが、侍女は、この少女は自身の禿と言って、身の回りの世話をする一種の従者兼内弟子のようなもので、元々お姫様の禿だったのが、今は私についているという説明を我々にし、従う主によって、その仕事内容は変わるらしいことも付け加えた。禿自身からも、泣きしゃっくりをしながら、侍女を慕うあまり貨物室に潜り込んだことの謝罪があった、お姫様もその禿を労わる様に、何か言葉をかけていた。三人、あの弩級戦艦からたった三人。と思うと、ギュッと胸が締め付けられる思いだった。荷解きとか、積もる話もあるだろうと、モニタリングしている彼女を残しリビングに戻った。
で、話は最初に戻るわけで。戻った俺はオートドライブにして、ゆっくり仕事をリビングでしようと持ってきて、先の合戦のデータ解析と、その清算、入港した先での修理の見積もりなど仕事をしていると、モニタリングが終わった彼女が怒ってるような雰囲気を醸し出しながら、特に貨物室から、少女が潜り込んだ事以外は異常は検出されなかったと、簡単に報告し、テーブルの向こうで俺の仕事を手伝い始めた、途中まで。で、途中で気に入らなくなったのか、ウーウー言い出し、テーブルを齧りだした。アンドロイドでも怒るのか、と感心しながら、この艦は彼女と一体で、彼女はメインの端末の一つであり、この艦のどこかにあるメインサブの中央電算機と二つで一つの双子のようなもので、彼女が居なかったり、気分的(アンドロイドに気分という表現が当てはまるのか怪しいものだが、現に怒ってるモードなので、そういったものがあるのだろう)なものが悪かったりすると、ポンコツの本領発揮となり、性能はかなり低くなる。だから、彼女が或る程度まとわりついてくるのも、コミュニケーション以外の理由で調子を整えて気分よく(どうもこの表現はしっくりこないが)仕事をしてもらいたいためである。 で、ウーウー言ってるので何とかなだめすかして、落ち着かせた。その代償は、テーブル一つで済むんだから安いものだ。が、そんな時に、タイミングが悪い時には続くもので。侍女が居室に現れ、長い戦いで汚れたままなので、私たちはいいが、お姫様だけでも沐浴を、湯殿を、使わせてさせてくれないかと、申込にきた、確かあの区画は、昔、強襲揚陸用の海兵隊が生活できる仕様になっていたはずだから、使えるものは使っていいと伝えると、謝意を言って出ていった、少しして、思い出し俺は後を追いかけ、かなり古いから、みんなで、気を付けて使ってくれ、と付け加えると、改めて、謝意を言った。戻ると、彼女は再びウーウーと言ってこちらを睨んでいる、お優しいんですね!追いかけて、何言ってたんですか!わざわざ追いかけて!今晩でも行くつもりなんですか?あんなのがいいんですか?それとも、あのお姫様を!まさか、あの、赤い髪飾りの女の子を!犯罪ですよ!と言って一人で言って、一人で怒って一人でウーウー言ってるので、とにかく落ち着け。とにかく落ち着け、となだめに、なだめた。暫くすったもんだした挙句、やっと落ち着きを取り戻したその時。今度はお姫様連中の居住区から、アラームが響き渡った。内心勘弁してくれ、と祈るような気持ちになった。
今度は何だ、と。急いでアラームの鳴る居住区に向い。ドアを開けると、一面水蒸気というか湯気で真っ白で、床はお湯で浸されて、その奥、お姫様か、侍女か、分からない叫び声と、バタバタと音のしている方に向かった、奥ではお湯が噴き出して辺り一面湯気で真っ白で、人らしきものが、何か言いながら動いていたのでどうした、と視界がクリアになる距離まで近づいた。すると、お姫様と、侍女と、禿が、着物はきていたが、それは薄い布でできているようで、後で聞けば湯帷子という物らしいが。お湯の中で濡れれば透けて裸同然の格好の3人が。あ。といったまま俺は本当に固まってしまい一歩も動けなかった。彼女たちも同じように、信じられない事態がおきて、どうしたらいいか分からないといった感じだった、その証拠にどこも隠すこともできない状態で固まっていた。次の瞬間、俺の鼻から生暖かいものが、そう、鼻血がどっと湧き出てお手で押さえたと同時に、無礼者!と怒号と共に、侍女が俺に飛びつき取り押さえにかかった。裸同然の格好で迫ってきたものだから、余計に鼻血が噴き出し、両手は自分の鼻を押さえてて自由が利かない、そして、ほぼ全裸の女性が迫ってくる、今までの戦闘経験の中では、全く想定していない、一方的な敗北。侍女に取り押さえられ、その腕の中で、鼻血を噴き出しながら、気が遠くなっていった。で、またリビングにいる。知らない間に運んでくれたのだろう。すまなさそうな顔をした三人が侍女を筆頭に、突然殿方が湯殿に入ってきたので、反射的に手が出てしまい本当に申し訳ないと、深々と詫びの言葉を入れた。と、対照的な睨む彼女。齧られたテーブル新調しなきゃとまた目をつぶった。
修理と補修、ボアアップと武器弾薬以外の物資補給のため。あと、今回の合戦の報奨を受け取るのに、協議会の支部のある最寄りのいつもの惑星に進路を取った、その星の軌道エレベーターの発着場にこのオンボロ艦を繋いだ。修理業者がすでに待機していて、こちらのオーダー通りすぐ取りかかるよう、契約書にサインし、艦から降りた。
ぞろぞろと、知らない者がみたら、何の組み合わせか分からない団体になってしまった。お姫様に侍女に禿に、俺にピッタリついているAIアンドロイドにと、推察するのも難しい取り合わせだろう。軌道エレベーターに乗り込み、地上へと降りて行った。懐かしい自然の重力がだんだんと体全体に押し付けられて、故郷の星での重力のある生活が思い出された。故郷の星は星間平均の重力の数十倍あり、星間ではトップクラスだと聞いたことがある、そのため、戦闘能力もその比較対象が無いくらいの最高レベルだと聞く。おかげで、この稼業も続けられるのもある。徐々に体に感じる重力を味わいながらそう思った。地上には数日かかるから、慣らすには丁度いい。何回かの夜明けというものを経験し、あと少しで地上に到達する直前には、降下中のエレベーターの窓から見るこの星の風景も、はっきりわかるようになり、それを見てると、姫様がぼそっとこの戦はいつまで続くのでしょうか?と俺に言ってるのか、侍女に言ってるのか、単なる独り言なのだろうか、自身の母星の事に思いを馳せてのセリフなのか。聞いたところで、答えは正解なんて分からないし、答えなんて持ち合わせていない。そう、この長い戦国時代。この長い戦争は途中でその勢力の分布の変化はあるが、概略を言えば、枢軸星域、連盟星域、同盟星域、帝国星団、と呼ばれる星々があり時には、その形を変え、離合集散を繰り返し、敵になったり味方になったりして覇権を争っている。その間に、それらの主導権争いから弾かれたり、潰されたり、武装蜂起したもの同士が固まり、それら武装集団から、傭兵集団、武装会社に発展し、財団系、財閥系、近衛団系、そして俺が世話になっている協議会系となった。それぞれが複雑に絡み合いながら、これが、約千年続いている。
その複雑さから、この長い戦いが続く要因ともなっている。近衛団系は特殊で、昔、ある星域として覇権を争っていたが、大会戦だいかいせんで滅ぼされ、その残党が集結し一団となり、やがて傭兵集団となった経緯がある。隙あらば、また覇権を握ろうとしている。他の傭兵とは一線を画している。財閥系、財団系はその名の通り、それぞれの資本が入っていて、どちらかといえば、連盟や同盟の専属といった感じだろうか。協議会系は、どこにも属さない傭兵が、お互い助けあって集まってるといった方がイメージが付きやすいだろう。他の3つの傭兵の集団に比べたら、あまりスマートでない印象は否めない。
あー、と言い、その事務員はイスを音を立てて引きながら、席を立ちその両耳に紐で止めている分厚い眼鏡を片手で下にずらし下から覗き込んだ。ここは、この星の協議会の支部の事務所。カウンターの向こうには事務員が机を向かい合わせに何個かの集団を作り、所狭しと、右に左にせわしく書類をもって、端末を持って、通信機器を使い、しゃべりながら事務を執っていたりと、中々忙しい事務所のようだ。その手続きカウンターの待合廊下にある長椅子に俺、彼女、侍女、姫様、禿、といった順で座っていた。やっぱりなんの集団か、行き交う人がそれとなく好奇な視線を投げかけている。おれもそう思う。傭兵の事務所には、女性を侍らしながら来るのはよく見る、派手な、その筋の商売をしてる系の女性を連れてくる、というのはよく見る、で、いま並んでいるのは、そんな雰囲気が一切しない真反対の彼女たちが行儀よく並んでいるものだから。好奇な目で物珍しくみられるのも仕方ない、と思っている。
事務員は、分厚い眼鏡の下から覗き込んで、俺たちを一瞥し、書類の山からファイルや、書類をより分け、崩れる書類の山から、両腕に挟んだ書類の束が落ちそうなくらい、ファイルを抱え、たしか、と言いながら背中を丸め、カウンターにその束をドンと置くと同時に、俺たちを呼び寄せファイルを開き書類を親指と人指し指を交互に舌で舐め、その指でめくりまた、指を舐めて書類を捲りを繰り返していた、それを見ていた禿は目を丸くし、姫様は、懐から扇を出し広げ口を覆い、侍女は、ほぼ禿と同じ表情で、目を丸くしていた。俺と彼女は見慣れていたが、みんなの表情を見てその事務員に止めるよう、声をかけようとしたと同時に、カウンターの上に広げたファイルの中から書類を取り出し、ありましたね、ここにサインを。と言いながら、また、指をなめ備え付けのペン立ての中から1本取り出し、どうぞと、と俺に差し出した。一同は、さらに目を丸くしておれがどうするのか、交互に俺とペンを見比べていたが、俺は自分でペン立てから一本を取り出しサインをした。聞こえはしないが、安堵の聞こえたように気がした。サインをしていると、その分厚い眼鏡を、元の目の位置に戻しながら、この間の合戦、大変でしたね、と社交辞令とも挨拶とも取れる会話をしてきた、サインを何枚かしている最中だったが、生返事をしていると、お姫様が、割って入ってきた。あの、新兵器とやらに乗っていたと。その時、事務所の空気が一瞬、凍り付いたのを、見逃さなかった。と同時に、視線とは言えない視線が、俺たちを凝視しているのが、感じてとれた。近くにいる分厚い眼鏡の事務員は、何も聞いてない素振りをして、何ごとも無いように、サインの確認をしていた。姫様は、もっと詳しく喋るところを、侍女も周りの雰囲気、それを感じてだろうか、姫様を優しくたしなめた。もっとしゃべりたそうだったが、ここは、侍女が正解だろう。この事務員に言ったところでどうしようもないことだ。何も聞かなかったように、次の仕事はどうされますか。と、書き終わった書類を整えながら、聞いてきた。もし、お決まりが無いようでしたら、と書類を数枚指し示し手渡した。それと、俺の予想通りお姫様が、俺達の保護下にあるのは何の問題もない、との見解も正式に出たと付け加えて、知らせてくれた。
まあ、報奨金がたくさん出たし、修繕修理、補給に時間がかかるから、この星の名物や観光でもと、事務所を出て、道すがらお姫様や侍女に提案した。そして、どういったところがお好みか、まあ飯でも食べながら作戦会議だ、とか言いながら適当なところで店に入った。入ってから、いつもの癖で雑多などちらかといえば女性を連れて行くような、じゃない方の、店を選んでしまい、少し後悔した。いつもAIアンドロイドの彼女と一緒に入っている店が慣れていて。今回は別の、静かなレストランにすればと後悔した。騒がしいのはこっちは慣れているが、禿やお姫様はきょろきょろして、落ち着かない風だった、俺は侍女にすまないと目配せし、早々に食べて出ていこうと、早く出てくる品物をAIを除く人数分頼んだ。相変わらず、騒がしく、昼間から、酒でご機嫌な奴や、言い合いをしてるやつ、両手の脇に女性を侍らせ抱え、自慢話か何かで盛り上がり、取り巻きの男女からおべっかを言われ、本当に雑多を絵にかいた様な奴らがそこ、ここに。先の合戦が終わった直後だからか、羽振りのいいやつが多いのだろう。こんな店に、少女たちを連れてくるセンスのない俺自身を呪った、女性を連れてくるのだったらもっと考えて選べよ!と、そういうところがカノジョができない原因かも、と自己嫌悪と自己分析が終わったところで、ようやく料理が運ばれてきた。
食べ終わり、少し落ち着いたかなと思って、飲料水を含んだ矢先。後ろの方で、あの取り巻き集団から、先の合戦での新型の次空振動弾の話題が大声で話始めだした。あの新型兵器は落ちぶれた星の連中がお金欲しさに卑怯な手を使って、だまし討ちをしやがった。とか、どうも主導した中らしい。だとか、ありもしないうわさ話でその話題に取り巻き連中の笑い声、嬌声でうるさかった。面倒くさい連中だな、早々に出ようと、皆の食事の進み具合を見てみると、お姫様の握った食器がかすかにふるえ、顔は真っ赤になり、涙を目一杯に溜め、ギュッと唇を噛みしめていた。後ろの集団が話していたことが、自分たちの事だと、そう思っているのだろう、隣の侍女がなだめていたが、運悪く、その取り巻きの集団の一人が、俺たちを見咎めて、その民族衣装どこかで見たことがあるぞ、その言語もどこかで聞いたことがあるぞ。と、酔っぱらいながら近づいてきた、そして、お姫様の顔をまじまじ見て、何か思い出したように叫び出した。こいつ、あの新兵器の片棒を担いでた、落ちぶれた王国の姫様ではないですか!とわざとうやうやしくおどけて、見せた。侍女は無礼者!と一喝したが、余計にそいつは煽りだした、罵詈雑言をその幼いお姫様に対して、なげかけた。俺は、静かだった、が、その幼い少女の一筋の涙がその頬を伝った瞬間。女性を傷つけたことに対する、俺の血と髪が一瞬でザワッとたぎり、刹那、煽っていたバカの顔面に俺の拳がめり込みそのまま縦回転しながら壁に貼りついた。その後はワンステップで、その取り巻き連中の中心のバカに、両腕に女性を侍らしているそのバカの顔面に、咥えていた葉巻諸共、拳がめり込んだ。メキと言ってソファーごと壁に向かって激突し、侍らしていた、両脇の女性はテーブルクロス引きの残されたグラスの様に、その空間にとどまっていた。とどまっている間に彼女たちの手を引き、床を滑らせ反対側に避難させた、その状態でも彼女たちはなにが起こったのかポカンとしながら床を滑って壁に軟着陸した。次の瞬間状況を把握した、その仲間が一斉にとびかかってきた、手にそれぞれ得物を持っているが、全て、動きが遅く、かわしながら足を払い体が宙に浮いたところを向かってきたもう一人に向かって、蹴り上げ壁にめり込ませ、頭に向かって振り下ろされた瓶を紙一枚でかわし、かわした反動で裏拳で跳ね上げ天井に突き刺し、タガーで向かって来た奴を左ステップと共にやり過ごし背中を肘で打ち抜き床にめり込ませた、纏めて四、五人が人数で押してきたが、床にめり込んだ奴の後頭部を握り、持ちあげ手足をバタつかせ暴れているが、持ち上げたまま、もう片手には天井にめり込んでいる奴の足首を握りそのまま、両手を振り回し後頭部を握ってたやつと足首を持った奴とで向かって来た4.5人に向かって振り下ろした。で、そのまま新たに向かって来た人間の塊に投げつけ、また、足元に伸びて転がっている奴の片足を持って人間を振り回し残りの人間にぶち当てた。途中で、ポリスは来てたみたいだが、傭兵同士のイザコザが分かると、急に他の緊急連絡が都合よく入ってきたみたいでそそくさといなくなったという。ざっと周りを見渡して、かかってくる気配もないので、マスターにこの店を破壊してしまったことを詫び、食事代と迷惑代と修理代を置いて、こっちもそそくさと長居は無用と、店を後にした。
お姫様は小さな声でごめんなさいと何度も俺に言った、俺は、誇りを傷つけられ、侮辱されたのだから。と、こういう時は、なんといえばいいのかと無い知恵をフル回転して。持ってた手拭で涙を拭いてもらおうと、手渡しながら、元気を出してもらうために何か声をかけた、とにかく少女と言っても女性だ、何を言ったのか覚えてないくらい必死だった。少しびっくりしたような顔をしたがやがて、少し笑顔が見れたので、この方法がいいのかと、少しほっとした。3人しかいない彼女たちに、何かできないものかと残りの日程を、この星の観光旅行などに費やした。そう、機嫌を取ってもらうわけではないが、気晴らしのために。で、ここでおれは大変なミスをやらかしてしまったらしい。それはやがて、俺の身に降りかかることになる。
補給や、修理が終わり、懐かしの我が艦に戻ってきて、修理箇所や補修箇所を一通り見て回り一息ついていた時、彼女がまたテーブルの向こうで、ウーウー言い出した。給湯関係の故障もあり、お姫様たちの部屋を手直しして、住みやすいようにしたのが気に入らないらしく、ずっとこの艦にいるんですか?と非難してきた。機嫌が悪いと、この艦の性能や、調子が十分発揮できないので、出来るだけ機嫌を取ってもらう意味もあり、ついでではないが、旅行にも連れて行ったつもりだが。このついで感がダメなようで、何かと突っかかるようだ。まだ出発はしていないので、航海日誌の入力はない。おかげで、不機嫌な彼女に近づかずに済んだのだが、その不機嫌さが災いして、電探にずっと同じ機影がマーキングされているのに、気づかないままになっているのを、この時はまだ知らないでいた。
スペースオペラって何だっけ?【仮】 吉高 都司 @potentiometer
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