第5話 人探しといきなりの戦闘(?)

「私は、昔一緒に暮らしてた神様たちを探してるんだ」

「あー、なるほど。神様を探して・・・。って、ええええ!?」

(いや、何を言っているんだこの子は。なんか怪しい宗教に加入してないか?)

心配するミツトを気にせず、亜芽は話を続けた。

「私が四歳くらいのとき、みんなで屋敷に住んでたんだよ。けど、いつの間にか違う場所で寝泊まりするようになって、数もだんだん減っていって・・・。それで、私も別の場所で暮らし始めたんだ。それで、その一緒に暮らしてた奴らを探すのを手伝ってほしい」

「いや、待って。今の話でさらに何が何だか分かんなくなってきた」

どうしても怪しい宗教勧誘にしか聞こえなかった。

ミツトの言葉を聞いた亜芽は、「うーん」としばらく唸ってから、口を開いた。

「まあ、人探しを手伝って欲しいってことだ!人じゃないけどな。・・・手伝ってくれたら嬉しいんだが」

随分と適当だが、神様の話をされるよりはそっちのほうが納得できる。

「分かった。考えとくよ」

と言ってもそんなよく分からないことを手伝いたくはない。

やんわりと断っておこう。

だが、亜芽は輝かんばかりの笑顔を見せた。

「やってくれるのか!?」

「・・・え」

「そうと決まれば、今週の土曜日に来てほしい場所があるんだ」

確かに曖昧な言い方だったが、流石に断られているとわかるだろうと思ったのだが。

訂正しようとしたが、あまりにも嬉しそうにはしゃぐので何も言えない。

ミツトが苦笑いを浮かべていると、亜芽が何か思い出したように手を叩いた。

「そうだ!もう一つ言っておかなきゃいけないことがあった。いや、見てもらったほうが早いか?」

亜芽が言うと、章はミツトと亜芽の背中を押して学校に向かって歩き出した。

「ここでは目立つから、学校の空き教室とか、人の目がないところのほうがいい。

・・・なあ、亜芽。本当にこいつに言っていいのか?また、お前が傷つくだけかもしれない」

亜芽は、通常通りの明るい笑顔で首を縦に振った。

「わかってる。でも、そう簡単に諦めたらもったいない」

(僕はこの後、何を見せられるんだ・・・?)

嫌な予感はしたが、章の真剣な___。否、ここにはいない誰かを睨むような顔に気圧されて、なにかを言う気にもなれなかった。

「・・・・・・・・・」

それからは、三人とも無言で通学路を歩き続けた。

結局、沈黙に耐えかねたミツトが話題を提示する。

「・・・雷先輩、なんで僕の家が分かったんですか?なにも言ってない気がするんですけど」

章に聞いたつもりだが、ミツトの質問に答えたのは亜芽だった。

「尾けさせた!」

「はい?」

誰に、と聞く前に、後ろから腕を引かれた。咄嗟に振り返ると、見慣れているはずの景色がぐにゃりと歪んでいた。

それも一瞬で、歪んでいたはずの道がすぐに元通りになった。

困惑し、ふと前を見ると、見たこともない刃物を持った男が、地面に向かって大きくその刃を突き刺した。

ミツトがそのまま進んでいたら、そこにいるはずだった位置だ。

男は、ミツトをじろりと睨み、それも刹那の間のことでミツトから見て右の方へ駆け出した。そこにいたはずの亜芽は跡形もなく消えており、ミツトにはなにが起こったのか分からなかった。

ミツトたちの前にはもう一人、男と同じ種類の刃物を持った少女が取り残された。

少女は、ミツトに狙いを定めると、その刃物を振り下ろした。

「・・・へ?」

少女は、ミツトの脳天まであともう少しという距離で何かにつまずき、よろめいた。

少女の右足には血が滲んでいた。傷口がかなり深いようで、足を引きずるように歩く少女の動きは、ずいぶん緩慢で、逃げようと思えば逃げられるような速度。

だが、ミツトは恐怖のあまり足がすくんでしまい、数歩下がるのがやっとだった。

その数歩の差を埋めるように、少女はゆっくりと距離を詰める。

章は守るようにミツトの前に立ち、余裕のある動きで振り返り、ミツトを見る。

「ミツト、グロいの得意か?」

「・・・・・・・・・」

ミツトは声も出せないままぶんぶんと首を横に振った。

「そうか、それなら目え瞑っとけ!」

言うと同時に、章は内ポケットからなにか黒いものを取り出し、少女に向けた。

ミツトが目を瞑ると、かちゃ、という金属音の後に、ばん、と大きな音がした。

それから五秒ほど経ったあとに、章の声が聞こえた。

「もう目開けていいぞ」

ミツトが目を開けると、そこにはなんの変哲もない道があった。

ミツトを襲ってきていたあの少女はどこに行ったのだろうか。なんだか考えてはいけない気がするので、考えないでおく。

それはそうと、ここは住宅街だ。

先ほどの大きな音、恐らく銃声を聞きつけた近隣の住民たちが窓ごしに僕たちを見ていた。

外まで見に来た人もいた。

「雷先輩、どうしましょう?」

「とりあえずここから離れたほうがいいだろうな」

章とミツトは、辺りを見回し、住宅同士の間の狭い道に急ぎ足で向かった。

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