第52話

私を心配して飛んできてくれたしゅんくんは。







「これから仕事なんだ」って、明け方に帰って行った。







「えっ!?ごめん・・・」







謝った私に、







「なんで謝るんだよ。俺が会いたくて来たのに」







「だって・・・こんなに遠い・・・」







往復6時間。


本当なら眠ってるはずのこの時を、運転に費やして、仕事へ向かわなくてはならないしゅんくんに、申し訳ない気がして。







そんな私の頭をナデナデして、







「いつでも来るって行ったろ?そんなこと、気にすんなよ」







って微笑む。







「・・・体、大丈夫?」







ほとんど眠らないまま仕事なんて、しゅんくんは大丈夫なの?







心配そうな私に、







「大丈夫。頑丈だけが取り柄だからな。」







って、安心させるように大きくうなずいて、笑顔になる。








その笑顔が愛しくて。


やっぱり、離れるのは寂しくて。







感情のまま、しゅんくんの胸に飛び込んだ。







わっ、ってびっくりしながらも、しっかり抱きとめてくれたしゅんくんは。







「こうやってさ、アカリからきてくれるだけで、すっげぇ嬉しいよ」






って、背中にまわした腕に力をこめた。







私はしゅんくんを見上げて・・・







「ありがとう、来てくれて。会わなかったら、あのまま私・・・」






言いかけた私の言葉を、







しゅんくんの唇がふさいだ。







私の傷に触れないくらいの、優しい優しいキス。







「また来るから。その時に、ちゃんと話そう」







「なにを・・・?」







「アカリが抱えてる不安だよ。アカリは、心配しなくていいから。」






そい言って帰って行った。






私の不安は・・・妊娠のこと・・・?







カレンダーを何回数えただろう。







生理がくるべき日を指折り数えて。






トイレに行くたび、『きてない・・・』ってがっくりする。

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愛しさの苦しみ @mimi23

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