第8話 読者選考

 おれたちは意気揚々と異世界追放恋愛小説を完成させ、〇ヨムの別のコンテストに送り込んだ。しかし、結果は惨敗。かすりもしなかった。


「どうしてだよ……」


 おれはがっくりと肩を落とす。


「読者選考が影響しているかもしれません」

「読者選考?」


 おれはピンときた。

 最近のコンテストは、読者同士で選考させる方式が増えている。運営効率化としては合理的にも見えるが、友人関係や作家個人の人気が大きく影響し、本来の作品の内容そのものの評価が見えにくくなるのだが……


「おそらくレビューの星数が関係すると思いまして、中間選考作品を調べたんですが、平均1400を超えていて、中央値でも595です。100以下のものはほとんどありませんでした……」


 愛さんが残念そうに視線を落とす。


「おれたちのレビューは良くて30だからな」


 その数字を思い出し、おれの胸が少し締め付けられる。

 作品の中身だけで戦うには、あまりにも厳しい現実だ。でも、ここで落とされたらどんな名作でも勝ちようがない。


「よし、なら戦略を変えよう」


 無理やり明るい声を出してみた。

 頭の中ではすでに新しいプランを組み立てている。


「戦略って……どうするんですか?」

「ファンを作るんだよ。ブランド戦略だ」

「ブランド戦略……!」


 愛さんの瞳が一瞬輝く。

 そうだ、小説もビジネスも、理想だけでは成り立たない。

 まずは人々の心をつかむことが必要なんだ。

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