第7話 POC

「さすがに全マシマシは、やりすぎちゃいました……」と、てへぺろする仕草も可愛い愛さん。


「チャレンジ精神は大事さ。ビジネスでもPOC(概念実証)が大事なんだ。複数パターンでテストしよう」


 要は一行目と二行目の組み合わせの問題だ。


「次は違う設定で行ってみよう。例えば、学園ものから官能、後宮ものから官能、政略結婚から官能……」

「じゃあ、追放から官能なんてどうですか?」


 一瞬、言葉に詰まるおれ。

 だが、愛さんが冗談めかして言ったのだと気づき、二人で笑う。


「それはさすがに無茶な組み合わせだろう」

「ですよね、ふふふ」


 こうして、おれたちはさまざまな設定と展開で第一話を試作し、複数のプラットフォームで公開してみた。まさに市場テストだ。

 しかし、どのパターンも反応は芳しくなかった。


「……実は、ダメ元で追放から官能パターンも作ってみたんです。試しに投稿してみますね」


『イケメンギルドマスターが私に冷たい視線を向け「この街に残る資格はない」と宣告し立ち去る。代わりに物陰から怪しいハゲ商人が現れた。

 突然の甘い抱擁と愛撫に、私の心と体は熱気を帯び――』


「ふふふ、意味不明ですけど……」


 愛さんが照れ笑いする。

 

 しかし、公開後の反応は予想を超えていた。

 コメント欄には「意外と斬新」「こんなの初めて見た」と高評価が溢れていた。


「……まじか?」

「……私、ちょっと思考を再起動してみます」


 愛さんは困惑しながらもどこか嬉しそうだった。












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