第6話 全マシマシ
『異世界に転生した瞬間、その月明かりの下で王女と出会った。光を纏うような美しい瞳が鋭くも優しく俺を見つめる』
いいじゃん、ちゃんと異世界転生から始まってる。
『彼女の唇が突然俺を捉えた。温もりと甘い息が混じり合い、胸の鼓動が激しくなる。指先が触れるたび、彼女の体が震えた』
おお、やはり2行目から恋愛シーン全開! 愛さん、さすがだ。
『そのとき「王女誘惑罪で逮捕だ!」と鋭い声が響いた。振り返ると、怒りに燃える国王が立っていた』
うわ、修羅場展開来た。
『俺は逮捕され、後宮内に設置された宦官育成学園に監禁されることになった。ふざけるな。俺は特殊能力を使って宮中の女官たちを虜にし、学園の奥深くにあるダンジョンで配信ビジネスを立ち上げることにした』
……どこまで行くんだ、この話。
「どうですか? 全部の要素を詰め込みました。全マシマシです」と自信満々の愛さん。
「確かに濃厚だね……」
おれは苦笑いを浮かべた。
でも、笑顔が可愛らしいからOKだ……とはいかなかった。
公開後のコメント欄は「一体どんなジャンル?」「テンション高すぎ!」「カオスだ……」と荒れていた。
「うぅ……やっぱりダメでした」と愛さんは肩を落とした。
「いや、おれは好きだよ。恋愛描写とか最高。二行でフォーリンラブしたよ」
「……ほんと?」
ボイチェン越しの声が少し明るさを取り戻した。
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