第4話 官能は1.5%

「愛さんの得意分野は恋愛だよね? 恋愛カテゴリーの様子はどんな感じ?」


 すると、愛さんの表情が曇った。

 恋愛カテゴリーは愛さんの主戦場のはずだ。しかし結果は……


「恋愛カテゴリーで受賞したのは6作品でしたが、すべて異世界ものでした。偽装恋愛や政略婚約、婚約破棄からのざまぁ……という内容です」


 流行のストーリーではあるが、愛さんの官能的な大人の恋愛小説とはかけ離れている。寂しそうに目を伏せる愛さん。


「本格的な官能、つまりエロに言及した作品は、ラブコメカテゴリーの1作品だけでした」


 愛さんの作風は独特で、冒頭の一行で出会いを、二行目で早くも濃厚なシーンに突入する。その大胆な表現には、恋愛を常識や段取りではなく、突発的な感情の爆発として描こうとする彼女の哲学がある。

 それを知っているからこそ、この現実は厳しい。


「1/68……つまり1.5%か。SFも3%だったし、お互いにこの結果は厳しいね」


 二人でため息をつく一瞬、沈黙が続いたが、ふと愛さんが顔を上げた。


「でも、それで諦めたら終わりです。次はどうします?」


 その声には、先ほどの陰りはなく、力強さが戻っていた。

 おれも思わず笑顔になる。


「よし、次は作戦会議だ。おれたちならきっと新しい道を見つけられるはずだ」

「はい!」


 愛さんの目が輝き、再び意気が高まった。

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