3話:うざい上司づらかよっ!

教室にたどり着いて、真っ先に前の黒板に貼り出された座席表を確認する豊と僕。


「お、やっぱ窓際じゃん! ラッキー! こういうラッキーもないとやってらんないぜ」


「今年も豊が前の席なんだ...」


「また露骨に嫌そうな顔しやがって!

仕方ねぇじゃんか! アイウエオ順の並びで大塚と大野だとほぼ間違いなくこの並びになるんだよ」


「ま、しゃーなし、かな」


「おい!」

ケラケラ笑う悪友は大塚豊。


自分の大野姓は特に嫌いでは無いけれど、今年も豊の後ろの席から始まる1年は、去年にタイムリープしたかのようで何ら変わりばえが無さすぎる。


とはいえ、あまり他人とコミュニケーションをとることを極力避けたい自分としては非常に助かるわけで、軽口を叩きつつも実際は一安心といったところ。


一番後ろの席も陰キャの自分にとっては好都合だし、どうやらこのクラスは中途半端な人数らしく、そのおかげで一番後ろの横並びはなく、自分一人で隣が居ないのも非常にありがたい。教科書を忘れなければ、という条件付きの話ではあるが。


「どうよ? あの廊下側の...」


お互いに席に座ったところで、豊に目だけで視線誘導されたので、その方をチラりと確認する。


「あ~、確かにいかにも豊が好きそうなタイプだね」


「おっ! さすが親友! わかってんね!」


「悪友の間違いじゃ?

まあ頑張りたまえよ大塚くん」

部下にするかのように肩をポンと叩く。


「いきなりうざい上司づらかよっ!」

ケラケラケラ。


いつものコントまがいのやりとりをしているうちに前の扉が開き、このクラスの担任と思わしき人物の登場で教室のガヤガヤした空気が一変、シーンと静まり返る。


「ホームルーム始めるぞ〜! 自分の席に着け〜!」


目測なのでアバウトではあるが、おそらく180センチくらいはあろうかという上下ジャージ姿の長身女性。


「今年一年間、キミらの担任をさせて頂くことになった大江原帆南だ、よろしくな。

この中に体育会系の部活をしている者がいるなら知っているとは思うが、女バレの顧問もしているので興味があれば、2年からでも気にせず気軽に声をかけてくれ。

女バレ部はほぼ毎年インハイにも行くような強豪だが、体力作りを目標に入っている生徒もいるので個々人に応じて...」

などと快活に自己紹介。


話し方からするに竹を割ったような感じの性格という感じがする。

髪はショートでどこか少年らしい雰囲気もあり中性的。顔立ちも整っていて女子からも人気が出そうなルックス。長身にスレンダーなシルエットはモデル体型とも言える。

いかにもスポーツが得意といった感じを醸し出していて、口調からもまさにキャプテンタイプだ。ここが女子校だったなら、宝塚歌劇顔負けの人気を博していたことだろう。

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