【黒人の幽霊】

羅心

【黒人の幽霊】 作・羅心

若い男が部屋のソファーに座ってテレビを見ている

部屋の隅に目をやるとアントニーが立ってこちらをじっと見ている


ファミレスで彼女と対面して食事をしている若い男

彼女の隣に目をやるとアントニーが座ってこちらをじっと見ている


若い男「いや、黒人の幽霊……」


タイトル【黒人の幽霊】


銭湯の湯船に浸かっている若い男

アントニーが立ってこちらをじっと見ている


映画館で映画を見ている若い男

アントニーが隣に座ってこちらをじっと見ている


DJブースでDJをしている若い男

客がノッてるホールでアントニーがこちらをじっと見上げている


自転車を漕いでいる若い男

後ろにアントニーが乗ってこちらをじっと見ている


電車の長椅子に座っている若い男

隣にアントニーが座ってこちらをじっと見ている


暗くした部屋でテーブルにロウソクを立ててこっくりさんをする若い男

10円玉に指を乗せると対面に座ったアントニーも指を乗せる


若い男「……あなたのお墓はどこにありますか?」


指が動く


「な」「い」


若い男「……ない?」


「し」「゛」「え」「り」「あ」


若い男「……いや、まじか」


若い男はナイジェリアまで飛行機で飛ぶ

アントニーが指さす方角に向かってバスやヒッチハイクでひたすら向かう


到着した村の片隅に汚れた墓がありアントニーに見られながら綺麗にして合掌する

満面の笑みを浮かべたアントニーが光の粒子になって天に消えていく


若い男「いや、なんで俺……?」


-完-

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【黒人の幽霊】 羅心 @rashin_momohime

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