5

 ――――ドカァッ!

 腹に食い込み、ふたりは相打ちで倒れた。


 そのまま少し壊れた天井から見える繊月せんげつを見つめる。


「…まさか…また相打ち…とはな」


「だな…笑えるぜ」


「…氷雅ひょうが…合併しないか?」


 合併……?


「奇遇だな…俺も同じこと考えてた」


「…名前は…そうだな」

 月沢つきさわくんは優しく笑う。


「…黒有栖くろありす


 黒有栖くろありす……?


「…のぞむ先輩の彼女が…黒髪の有栖ありすで」

「…お前の髪も黒」

「…何より…黒髪はありすの憧れだからな…どうだ?」


 月沢つきさわくん…私の為に……?


「いいんじゃねぇか…総長はどうする?」


「…総長は…氷雅ひょうが、お前だ」


「はっ…最後まで…食えねぇ奴だ」


 コツンッ。

 ふたりは倒れたまま拳を突き合わせると瞼を閉じ、意識を失った。


 その2つの拳は力を失い、地面へと滑り落ちていく。


月沢つきさわくん! 氷雅ひょうがお兄ちゃん!


「ありす!」


 夕日ゆうひちゃんの支えを払い、私はふたりに駆け寄る。


月沢つきさわくん…?」

氷雅ひょうがお兄ちゃん…?」


 まさか死――――。


 私はその場で崩れ落ちるも、ふたりの体をさする。

 ふたりは満ち足りた顔で両目を閉じているだけで何も発してはくれない。


 違う。

 違う、違う。

 こんなの、悪夢だ。

 悪夢に決まってる!


「…やだ」

「やだやだぁ!」

月沢つきさわくん! 氷雅ひょうがお兄ちゃん! 起きてよお…!!」


 周りを囲う有栖ありす黒雪くろゆきの特攻隊長や奇襲隊長のすすり泣く声に、

 膝を落とし泣き崩れる下っ端達。


 夜野やのくんの目からは一筋の涙が流れ出て頬を伝い、

 夕日ゆうひちゃんは夜野やのくんに肩を支えられながら耐え切れずに泣く。


 飛高ひだかくんは天川あまかわくんの前に崩れ落ちたまま静かに涙を流した。


 月沢つきさわくんと氷雅ひょうがお兄ちゃんの傍にいられたらそれだけで良かったのに!


「なんでっ……」


 喉の奥から、堪えきれないように嗚咽を何回も漏らす。

 滑り落ちたふたりの拳を涙で濡らしていく。


 お願い、ふたりとも遠くに行かないで。

 私の傍にいて笑っててよ。


「嫌ぁぁああああああああっ……!!!!!」


 私は発狂すると、

 ふ…っ。

 目の前が真っ暗になり、ふたりに覆いかぶさるように倒れ、私は意識を失った。

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2024年12月19日 00:00
2024年12月19日 00:00
2024年12月19日 00:00

総長、私のリボンほどいて。⋈ 空野瑠理子 @sorano_ruriko

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