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「全面抗争を止めに来ただと!?」

「ふざけんな!!」

 黒雪くろゆき有栖ありすの親衛隊が叫び、中に入って来て、私を囲う。


 そして、有栖ありすの親衛隊である紫髪の男が、

 ドサッ…。

 私の前に天川あまかわくんを投げ捨てた。


天川あまかわ…くん…?」


「こいつ、死んだよ」

 紫髪の男がニヤッと笑う。


 死…んだ……?


 私はキッ! と睨むと紫髪の男の胸倉をぎゅっと掴む。

 もう、流れ落ちる涙を止めることが出来なかった。

「なんで!? なんで殺したの!? なんでよお……!!」


黒雪くろゆきだからに決まってんだろ!? 離せよ!」

 紫髪の男は私を突き飛ばす。


「きゃっ!」

 視界がぐにゃりと歪み、私はその場で倒れる。


「ゴホッ、ゴホッ…」

 私は血を吐く。


 やばい、唇切れた……。


 紫髪の男が私の右腕を掴むとそのまま持ち上げる。


「なんだ? 口ほどにもねぇな」

「全面抗争を止めるなんて無理なんだよ!」

「総長のガチ喧嘩、邪魔すんじゃねぇよ!!」


「…邪魔なのは」

「てめぇだ!!」

 月沢つきさわくんと氷雅ひょうがお兄ちゃんの叫び声が聞こえたと同時にふたりが走って来て、紫髪の男を木刀で殴り倒し、月沢つきさわくんが私を抱き止める。


月沢つきさわく…ゴホゴホッ…」


「…もう大丈夫だ」


「大丈夫じゃねぇ」

 氷雅ひょうがお兄ちゃんは冷酷な表情を浮かべる。


「ありすにこれ以上、手を出すな。全員殺す」


 黒雪くろゆき有栖ありすの親衛隊はひどく怯えた。


「…全面抗争は終わりだ! 今からタイマンを張る!!」

  月沢つきさわくんが大声で叫ぶと、


 廃墟に全面抗争を止めた黒雪くろゆき有栖ありすのケツ持ちの下っ端から、特攻隊長や奇襲隊長が次々に中に入ってくる。


きょう!」

 飛高ひだかくんは天川あまかわくんの前に崩れ落ち、


 三月みつきくん、夜野やのくん、夕日ゆうひちゃんは私の近くまで歩いて来た。


「…ありすを頼む」

 月沢つきさわくんは夕日ゆうひちゃんに私を託す。


月沢つきさわく…」


「…そこで見てろ」


 あぁ、もう止められないんだ……。


 月沢つきさわくんは氷雅ひょうがお兄ちゃんと中央に立つ。


 夏の夜風が吹き、月沢つきさわくんと氷雅ひょうがお兄ちゃんの特攻服の上着の裾がふわり、と上がる。


「ありすは、絶対、渡さねぇ」


 ふたりが宣言をすると風が止んだ。


 同時に地面を蹴り、木刀の先がぶつかり合う。


 木刀を振るう動きが速すぎて見えない…。


 互角で一秒たりとも遅れを取らず、

 弾かれ、バク転、振るう、を繰り返す。


 ――――ガキィーン。

 2つの木刀が真っ二つに折れ、地面に突き刺さった。


 ふたりは折れた木刀を投げ捨てる。


怜王れお――――っ!!」


 氷雅ひょうがお兄ちゃんが初めて苗字ではなく、名前で雄叫びを上げると、


氷雅ひょうが――――っ!!」


 月沢つきさわくんも名前で絶叫する。


「うぉぉぉぉぉお――――っ!!」


「…あぁぁぁあああ――――っ!!」


 ふたりは腹の底から最後の気合を振り絞った。


 月沢つきさわくんと氷雅ひょうがお兄ちゃんは拳で殴りかかる。


 月沢つきさわくん! 氷雅ひょうがお兄ちゃん!


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