機材の調達、とっとこ走るよ森太郎



「てかさー、挨拶みたいなの決めない?」




 自称全国のVtuberの味方である機材屋に着くと、可愛いデザインのいろんな機械が並んでいた。その中で、椎菜が指定した黒系統で黄色がアクセントカラーになっているものを探していたら、同じく水色系のものを探していた椎菜に声をかけられた。




「例えば?」


「森太郎の中の原液、恋路ノイズでーすとかどうよ」


「いやなんでだよ」


「私だったらー、みんなの心を急速冷凍!散℃冷でーす!とか」


「自分だけまともにしようとするな」




 椎菜は、あたしの雑なツッコミにえへへと笑って、自分用の可愛い機材を選び終えた。全部水色と白で、いわゆる天使界隈のものばかりだった。




「てか、色とか揃える必要ある?性能良ければなんでもよくね?」


「えーでもさ、いつか部屋紹介とかするかもしれないじゃん?それに可愛いもの見てると気分上がるし」


「確かに」




 部屋紹介かー。椎菜の部屋汚そうだな。なんて、本人に言ったら全力否定されそうなことを心の中でつぶやいた。




「そんなことないもん!だいぶ綺麗だよー?」


「え、待ってあたし今口に出して言ってた?」


「思いっきり言ってたよ。おいおい、心の声ダダ漏れじゃーん」


「心と口繋がってるからしゃーない」




 どうやら思ったことがすぐ口から出るらしい。気をつけよう。




「お買い上げありがとうございます!またのご来店をお待ちしております!」




 大量の機材と中身が半分以上消えてかさばらなくなった財布と一緒に機材屋を後にして、あたしたちの活動拠点、つまりあたしの家へと向かった。けど、




「あれ、坂本?それに衛倉も」




 途中でスーパーウルトラハイパー会いたくない超絶ドアホティーチャーにあってしまった。




「あー……お久しぶりです」


「久しぶり久しぶりー元気にしてたか?」


「まぁ、はい……」




 ショックのあまり硬直して喋れない椎菜に代わって、あたしがこいつ、田中森太郎たなかもりたろうの相手をする。クソめんどい。




「坂本が外出なんて珍しいな、なに買ったんだ?」


「なんでもないです。先生には関係ないですよね、触らないでもらえます?」


「そんな尖らなくてもいいじゃないか、ちょっとぐらい見せろよー」




 マジでこいつクソだるい。自分がセクハラで免職になった自覚ある?




「なんだその言い方は!」


「あ、やべ。心の声漏れてた」


「お前、本当にいい加減にしろよ!調子乗ってんじゃねえ!」


「調子乗ってるのはどっちだよ。ていうかもう先生クビになったんだから、あたしたち先生と生徒の関係でもないんですけど。関わらないでもらえます?このど変態が」




 あまりにも腹が立ちすぎたから、椎菜の手を掴んで家に無理やりつれて帰ろうとする。手をとって歩き出した時、田中が何か言った。




「お前、マジで何様のつもりだよ!」


「別に何様でも。強いて言うならお前の中の原液様かな」


「は?なんて?」




多分椎菜にしか伝わらないであろうしょーもない冗談を吐き捨てて、硬直状態の相方を無理くり家まで連行した。

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引きこもりのお笑い極振り中学生、イラストレーターの親友とVtuberになって電子の海を無双する マヨ崎ツナ子 @mayosaki_tunako

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