引きこもりのお笑い極振り中学生、イラストレーターの親友とVtuberになって電子の海を無双する
マヨ崎ツナ子
森太郎の中の原液、デビュー準備をする
「だからさー!かなは鳥籠の中の原石なんだって!」
「森太郎の中の原液ぃ?」
あたし、
「あたしが、何って?」
ドアを開けて、椎菜を迎え入れる。途端に朝の香りがする寒風が入ってきた。
「鳥籠の中の原石!!親とか周りの人とかに縛られてて自由に動けないだけで実は才能の塊だってこと!」
「はぁ…?」
「つまり、Vtuberなってみない?」
「無理すぎない?」
あたかも自分の家かのようにソファーに陣取った椎菜からの提案は、かなり思いがけないものだった。
「実はそうでもないんだよねー。私センスの塊だし絵上手いからガワとか名前とかロゴとかは準備してあるんだ。あと要るものは機材一式と私たちみたいな中学生でもVtuberができるようにサポートしてくれる大人だけ。時間はお互い引きこもりだしたっぷりあるよね?」
「そうだけど…」
「それにかな前からずっとVtuber好きじゃん?」
「まぁ見るのは好きだけどさー」
「声も可愛いし」
「それはよく言われる」
「歌も……まぁ、歌の上手い下手は機械で誤魔化せるし大丈夫だよ、多分…」
「あたしが歌下手みたいな言い方やめて?そっち側の一方的な勘違いで勝手に決めつけないで?全然うまい方だし、あたし」
謎にあたしが歌下手みたいな設定になってるけど、そもそもあたしこいつの前で歌披露したことあったっけ?え、もしかしてあたしのパソコン見た?
「そうそう、そういう自信たっぷりで自己肯定感高いところも向いてると思う!」
「そうかなー?」
「うん!何よりかな面白いし」
「それは自分でも思う……って引かないで?そんなゴミを見るような目で見ないで?自己肯定感高いっていいことじゃなかったの?」
「うるさいなぁー、とりあえずガワと名前見て!二つあるからどっちがいいか選んで、余った方私が使うわ」
「話を勝手に進めないで?」
「いいから、いいから」
見せられたのは、プロ並みに上手い二人の美少女の立ち絵だった。さすが学校をサボってイラストを描いてるだけはある。
片方は白と水色を基調とした全体的に明るめの色使いで、氷をモチーフに作られてるようだった。ちょっとカールされてるツインテールが印象的。
もう片方は黄色と黒を基調とした電気っぽいモデルだった。黒いロングヘアーにインナーカラーで蛍光色の黄色が入ってて、かっこいい。
「あたしこっちがいい」
あたしは、絶対可愛いキャラとか似合わないタイプだから、即座にかっこいい黒と黄色の方を選んだ。
「だよねー知ってた。そのモデルかなのために描いたもん」
「じゃあ聞くなよ」
「ないと思うけど万が一逆の方選んでたら全力で阻止してたわー」
「最初から選ばせる気ねーじゃん」
「まぁ、それはそれでギャップあっていいと思うけど」
「結局どっちなんだよ」
椎菜と話してると疲れるので、自分が選んだガワの名前を見てみる。
「ノイズ?」
「そう、
「恋ねー」
「恋って漢字入ってるの嫌?いいと思うけど」
こいつ、あたしが14年間恋とは無縁の人生を送ってるって知ってるくせにわざと入れやがったな。腹たつー。
「かなが選ばなかった子は
「選ばなかったんじゃなくて選ばせなかったんだろ」
「うん!どうせ私のガワになるし頑張ろーと思って、かなの方よりも印象に残りそうな名前にしたんだー」
「ずるくね?職権濫用よくない」
まぁ、やってもらってる手前、文句は言えない。ノイズって名前もそこそこ気に入ったしいいや。
「そこでさー、機材の話なんだけど」
「あたしなんとかするわ」
「え、ガチ?どうやって?」
「親が海外転勤で3年ぐらい帰ってこないらしいんだよねー。だからうちの防音室使い放題だし、かなりの大金置いて行ったからそこそこいい機材を二人分買えると思う。」
「ナイスー!さすが金持ち!助かりますかな様ー!」
「ふっふっふ、いいだろう。善は急げっていうし、今から買いに行ってやろう!」
「あ、調子乗ってる」
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