案件28.キガボクメツ解散!?

 フードバンクセンター、キガボクメツ解散の危機に対し、カネリが聖明機関せいみょうきかんに異議を唱えた。


「待てよ解散はやり過ぎだろ!金がねえヤツらのために、捨てるつもりの食い物を盗んだだけじゃねえか!!」


「それにここを解散したら、だれがそいつらの面倒を見るんだよ!?」

「それが異救者おまえたちの仕事だろ」


「彼らにも正義があるのはわかる、だがルールを失った正義は暴力でしかない」

「正義の名の下に、裁かなくてはならないんだ」


 リンドーは真剣な表情で、カネリに説明をした。


「ぐぅ・・・!」

「なら黒火手団くろびてだんが、キガボクメツの活動を引き継ぎます!」


「・・・簡単に言うけど、悪堕者シニステッドの影響で企業などが無償で提供できる廃棄食品が減ったのは知ってるよね?」


「買い取るなら話は別だけど、いくつもの企業などに何度もやるんだよ。新人の君たちに、それほどの大金を稼ぐ自信はあるのかい?」


 ボンゴラの決定に対し、モズロウはやや厳し目に指摘した。


(盗まれた食べ物の被害総額は、およそ80万イェン・・・。それを買い取り続けるなら、何倍いや何十倍以上のお金がかかるのは間違いない!今のおれのスコアだけじゃ―)


「オレのスコア10万があれば、ゲキアツ余裕だろ!」

「じゅっ・・・10万点!!?」


 カネリの思い切った決断に、その場にいた人々はみな驚いた。


 換金すれば1億イェン、この街一帯の廃棄食品を数年分買い取ることができるからだ。


「そうだ、こいつ一人で1万以上の悪堕者シニステッドを倒したんだ!」


「でもカネリいいの!?救世主になるチャンスが―」

「目の前で困ってるヤツを見捨てて、救世主になれるかっ!」


「10万点なんざ、あっという間に稼いでやるぜ!」


 カネリは自信に満ちた笑顔で答えたが、モズロウの指摘はまだ終わらなかった。


「お金の問題は解決したけど、フードバンク運営のノウハウや手続きなどは把握してる?人員の確保は?」


「ボンゴラ、そこはお前に任せる!」

「えーっと・・・それは・・・」


「こんにちはー!聖女マナキでーす!」


 なんと突然、一同の前にマナキが現れた。お忍びではなくいつもの正装でだ。


「せっ・・・聖女様ァ!!?」

「どうしてここに!?」


「聖女は困ってる人がいたら、どこへでも飛んで行きまーす!ところで何があったの?」

(マナキちゃん、タイミングを見計らって出たな・・・)


 マナキはおよそ3分で事情を把握した。


「なるほどね~、まずはみんなで救世会きゅうせいかい本部へ行って、キガボクメツの罪と罰をはっきりさせましょう!」


「イザベロとクレイアは、キガボクメツの活動を代行できる異救者イレギュリストの募集かけて。スコアを多めに提示すればきっと集まるから」


「「承知致しました」」


「廃棄食品を買い取るから、カネリさんのスコア遠慮なく使わせてもらうね」

「よし持ってけ!」




 26日ちょうど18時、キガボクメツ一同の裁判が始まりカネリとボンゴラ、マナキが彼らの事情を弁解したが、有罪は免れずキガボクメツは解散を言い渡された。


 しかし二日後、カネリがオーナーを務める新たなフードバンク【ゲキアツメシ】が結成された。


 メグムを除くキガボクメツ一同の判決は懲救ちょうきゅう500点、ゲキアツメシの職員として人助けに貢献するよう命じられたのだ。


 つまり名義が変更しカネリがオーナーになっただけで、キガボクメツの職員たちはこれまで通り活動することを許されたのだ。


 カネリは、キガボクメツ改めゲキアツメシの職員たちの前でスピーチを始めた。


「いいかお前ら!ゲキアツメシの目的は、食い物がなくて困ってるヤツらにたらふく食わせてやることだ!!」


「金はオレが用意してやる!細かいことはお前らに任せる!困った時は相談しろ!わかったか!!」


「「「わかりました、カネリオーナー!!」」」


「一人で出資して大丈夫?おれもお金出そうか?」

「ダメダメ、ゲキアツメシはオレ様のものなんだ!勝手なことはさせないぞ!」

「大丈夫ならいいけど・・・」


「モズ先輩、アタシは不安で仕方ありません」

「彼女はあくまで活動資金を提供するだけで、今まで通り古小須ふるこす代表がみんなをまとめるから、心配いらないんじゃないかな?」


上内うえない君、ここで少しの間お別れだな」


 メグムの判決は懲救ちょうきゅう2千点、異救者イレギュリストになるための訓練を受けた後、ゲキアツメシで人助けすることを命じられたのだ。


「必ず戻ってきます」

「ゲキアツに待ってるぜ、メグム!」


 ボンゴラとマナキは、カネリとゲキアツメシの職員たちを微笑ましく見守っていた。


「マナキちゃん、色々ありがとう」

「ボンゴラくんもお疲れ様、でもカネリさんに負けちゃダメだよ」


「うん、君のためにも救世主になってみせる―」




 28日10時頃、ゲキアツメシの活動が始まったところで、カネリ、ボンゴラ、モズロウ、リンドーの採点が始まった。


「モズロウとリンドー、カネリとボンゴラの4名は、廃棄食品消失事件の解決に貢献し悪堕者シニステッドを撃破したため、それぞれ200点追加されます」


「君たち黒火手団くろびてだんの協力のおかげだよ」

「こちらこそ、手を貸していただきありがとうございます」


「そして今回のMVPはカネリです!ゲキアツメシの結成とオーナー就任により、元キガボクメツ職員たちの活動を助け、今後飢えに苦しむ人々の救済につながり、廃棄食品買い取りによる経済への貢献から、1500点追加します!」


「いよっしゃあああああ!!!」


「なお、廃棄食品の買い取り分とゲキアツメシの活動資金などにあてるため、カネリがもつスコアから10万点を引きます」


「自分の利益を顧みず人助けする、それが奴の正義・・・」


 スコアをお金に換えることはできるが、お金をスコアに換えることはできない。

 何故なら、金持ちが救世主になってしまうからだ。


 寄付や出資などお金を使った人助けでスコアを獲得できるが、金額に応じたスコアを得られるとは限らない。


 カネリがゲキアツメシに出資し十分なリターンを得られるかは、ゲキアツメシ全職員の頑張りにかかっているのだ。


 採点が終わり、カネリとボンゴラが事務所に帰ろうとした時、モズロウが二人を呼び止めた。


「帰る途中で悪いけど、僕達の支部まで一緒に来てくれないかな?」

「構いませんが、何のご用ですか?」


「隊長が黒理くろすじアゼルについて、君達と話がしたいそうなんだ」

「「アゼル!!?」」


 果たしてアゼルの身に、一体何が起きたのだろうか!?次回に続く!!




『スコア早見表』

 

黒理くろすじアゼル(初級)

6663点(+300)


手差てざしボンゴラ(初級)

6145点(+200)


激熱げきあつカネリ(初級)

3299点(-98300)


スコア100億点以上で救世主になれる!

まずは1万点以上を目指し、3級試験に合格せよ!


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2024年12月19日 06:00
2024年12月22日 06:00
2024年12月25日 06:00

イレギュリズム テツヂロス @tetsudirosu

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