第3話①

店内に人は多くなく、カウンターからはそれなりに離れているため店員の目につかない。


店で、それも人間の国で…。

魔族の頂点である魔王は、演技でもその口から告白をした。


「…うん、我様はリオが好きだ」


きゅっとリオの手を握る、雪のように白いその手は見た目に似合わず熱を帯びていた。

その熱を感じて、我様は落としていた視線を上げてリオを見つめ直す。


黒い瞳が我様を写している。

癖の強い白い髪と黄金の瞳、鏡で何度も見た整った顔はまさに魔王アトレア本人である。

だが、リオに告白したその顔は今にも逃げ出しそうなほど恥ずかしそうで、少し涙目になってる。


そして、そんな我様に対してリオは…。


ポタ。


「ん?」


ポタ、ポタ…ポタ。


「あ、これは…その」


赤い雫が垂れてる。

机に落ちた雫は、花のように広がり赤黒い色を咲かせている。

これは、血だ…リオの鼻から、血が垂れて…って!


「ちょっ、おまえ鼻血出てるじゃないか!」

「あ、大丈…」

「とても大丈夫には見えないんだが!?ほ、ほら!我様のハンカチを使え!そ、それと店員!早く来てくれ!」


咄嗟に取り出した白いハンカチ。

それなりの高級品だが、惜しみなく無垢な白を勇者の血の色へ変える。

リオはハンカチの価値に気付いていたようだが、なにか文句を言う前にその鼻にハンカチを詰めてやった。

まったく、魔王が告白したと思ったら鼻血で返されるとはな!前代未聞だぞ!


「あ、ありがとうアトレア…」

「一体なんだったんだ…急に鼻血が出るとか」

「う、これはその…体質なんだ」


まだ止まってないのか、天井を向いてリオは語る。

そんな体質あるか!?と驚きつつも、リオはどうやら訳アリのようだ…。


「勇者になる前に、修行をつけられたんだ」

「長く険しい修行だった…正直、今までの旅より修行時代の方がつらいくらいにね」

「そこまで言うほどなのか…」

「で…修行の最中は色々と我慢させられてね」

「ボク、女の子が大好きなんだけど修行中は恋愛できなかったからか…気がついたらこんな風に鼻血が出るように…」


な、なるほど…。

禁欲生活が原因で極端に女に弱くなったってことか。

だから温泉街で鼻血出して倒れてたのか、納得はしたが、まさかここまでしょうもないとは…。

だが、今の情報で確信したが…リオは我様に弱いということだ、さっきの告白と手繋ぎでそこまでのダメージ…いける、いけるぞ!


「フフフ…大変な思いをしてきたようだが、まずは告白の返事を聞かせてもらおうか!」

「へっ…!?ボク、こんな体質なのに付き合ってくれるの!?」

「別に鼻血くらいで我様はリオを嫌いにならないわ!むしろもっと血を流してほしいくらいだな!」


む、最後のは失言だった気がする…。

だがリオは特に疑問に感じていない様子で、興奮気味に我様に近付く。


「驚いた、いつもならこんな変な体質を気味悪がるのに…やっぱり、僕とアトレアの出会いは運命だったのかも!」

「う、運命?」

「そう!寂しい一人旅の最中…こんなところでボクを尊敬して、嫌わない女の子と出会えるなんて運命としかいいようがないもの!」


いや、他にも運命要素ある気がするけどな。

立場偽ってるけど我様魔王だし…。

だが勇者はそんなこともつゆ知らず、我様の手を握る。

が、その顔は少し申し訳なさそうだった。


「でも、ごめん…まだ初めて会ったばかりだからさ…」

「だから、今日一日…デートってどうかな?」



急な冬の到来で風邪引きました

途中までしか書き上げてない状態で申し訳ございません、明日続きあげると思います



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魔王さま、ハニトラのお時間です @rin126

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