タイムスリップの先
あれ…おかしい。
僕は、夢を見ているのだろうか。
頬をひっぱ叩いてみる。
痛い。
じゃあ現実なのだろうか…。
混乱していると、僕に話しかけてくる人がいた。
「おはよう。」
「お、おはようございます。」
とても申し訳ないのだが、僕は中学校のころ、人付き合いを好んでいたわけではないため、人をあまり覚えていない。
ましてや、中学校2年生だなんて、印象に残っているのは美人と噂の佐々木美羽さんだけだ。あと眼鏡の読書好きの……
えっと、まぁそんな感じだから話しかけてきた人が誰だか本当にわからない。
名札を見ると『加藤美紗』と書いてある。
加藤さんか…、たしか……学級委員だったような……
「伊坂くん、ノートもらってないんだけど。」
どうやらこの時の僕はノートを出していないらしい。
なんてことをしてくれているんだ、と過去の僕を責める。
「ごめんごめん、お願いします。」
本当に、何をしているんだ、過去の僕。
ん、待てよ。ここは夢の世界。
ならば今から陽キャの一軍男子へと生まれ変わろうじゃないか。
夢なのだから、何にだってなれる。
そう考えた僕はさっそく隣の席の人に話しかける。
「何しているの?」
突然話しかけてきた僕に戸惑いつつもこちらに体を向けてくれる男子。
名前は……原卓斗くんか。
「提出課題だよ、伊坂くんは終わったの?」
「全くやってないよ。やばいな。」
「はやくしたほうがいいんじゃない?」
トントントンと話が続く。
結局僕はこの朝の時間、原くんと話して終わった。
次の休み時間、僕は、原くんに連れられクラスの一軍のところへと向かう。
「うぇ、どした、お前ら。」
いかにもチャラい男子が話しかけてくる。
「いや、楽しそうだから混ぜてほしいなって。」
僕が言うと、
「珍しいな、伊坂から来るなんて。」
と言われてしまう。
「たまにはみんなと話したいなって。」
「面白いやつ。」
僕はこの休み時間に、一軍のやつらと一気統合。
まさかの見ているアニメが同じなんだと。
「お前もあいつ好き!?」
「あたりまえだろ。」
「あの倒すシーンかっこよくね?」
「でも僕おにぎりのとこ好きだよ。」
「そこ好きなやつ初めて見た。」
一軍でも生きてる世界は同じだと実感しなんだか嬉しくなる。
原くんもなんやかんやで馴染んでいる。
中学校は単純でいいな。
とその時、廊下に髪の長い女子が見えた。
彼女に見覚えはない。
まぁみんな誰か分からないんだけどな。
たが、彼女の顔だけはどう頑張っても思い出せなかった。
思い出すのを許さないというかのようにこちらを睨んでいる。
彼女はいったい誰なのだろうか。
記憶の中の君と一生分の恋をした @ouka_kisaki
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