第29話
「うっわ。人いっぱいじゃんか〜。なっちゃんこの人混みの中行くの嫌でしょ?
僕が代わりになんか買ってこようか?」
「……いや、自分でかう。」
一緒に食べれないにもかかわらず
買ってきてくれるという春に断りを入れ、
2人で人混みへと足を進めた。
すると先程まで人気パンの争奪戦が
目の前で繰り広げられていたというのに、
急に静まり、俺と春の入るスペースが開けられる。
隣で春がみんなに「ありがと〜」と愛想を振り撒いていた。
『あら、那月くん。今日はパンなのね!
あんた細いんだからこのカツサンドと焼きそばパンでも食べなさい!うちの人気商品よ!』
勝手に買うパンを決められたが、
大人しくそれに従い小銭を渡しパンを受け取り
人混みから抜け出した。
本当はクリームパンが食べたかった…
と、少し落ち込んでいると
買い終えた春が戻ってきた。
「はい!なっちゃん甘いの好きでしょ?焼きそばパンと交換ね!」
クリームパンを渡された。
「…なんで?」
「だってなっちゃんクリームパン見てたでしょ?それくらい僕だって気づくよ。」
交換した焼きそばパンを頬張りながら
自慢げに言う。
まさか気付かれるとは思ってもみなかった。
でも鋭い春は案外俺の事色々気付いてるのかも知れないなとふと思い、パンのお礼を言った。
secret。 露利 @mya_kana
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