第16話

一服をした先輩は私の方に体を向け肘を付きながら、私の髪や顔、身体をずっと触っている。



そんな先輩をじっと見る。



「なに?」


「先輩…」


「ん?」


「帰らないんですか?」


「は?なんで帰るの?」


「もう…終わったじゃないですか」


「帰りたいの?」


「いえ、そういうわけじゃないですけど」


「まだ終わらせないって言ったら?」


「え?」


「てか帰す気ないけどね」



ハハッと簡単に笑う先輩。

スッキリした顔の先輩にちょっとイラッとした。


私の気持ちなんてわかるわけない。

私の気持ちなんて考えてくれるはずがない。



「…もういいです」


「何が?」


「もういい…」



私はヤるだけの女。ヤるだけヤッたら終わり。

こんな私じゃ満足できない先輩はまだヤリ足りないだけ。



「ってかさぁ」


先輩が私の上に乗ってきた。


「もういいって、何がいいの?」


私の目をじっと見つめる先輩の視線が鋭くて痛い。


「……」


その視線に耐えられず私は顔を横に向けた。



先輩は私の顔をグイっと元の位置に戻すと顔と身体を押さえつけて何度も何度も激しいキスをしてくる。



「ん…」



急にスッと離れた唇。


次を待つ私の口はだらしなく開いたままで確実にまだ先輩を求めている。


私を見下ろす先輩の首に手を伸ばし引き寄せる。


私をじっと見つめる先輩。


早くキスをしてほしい私。


ゆっくりと顔を近付けてくる先輩が口を開いた。



「おまえ…俺と付き合う気ある?」


「ないです」


友達以下のヤルだけの関係なんてヤダ。



「あ゙ぁ゙!?」


先輩がすごい声を出した。

眉間に皺が寄り、右の眉がピクッと上がった。



「ただヤリたいだけですよね?」


「あぁん!?」



先輩の目がどんどん鋭くなっていく。



「先輩とそんな関係になりたくない」


「他の男ならいいのかよ」


「先輩とは無理です」



私の口からボロボロとこぼれだす本音。



「…なんだよそれ」



先輩のセフレになるなんてイヤ。



「先輩の都合のいい女になんかなりたくない」



睨むように先輩を見つめた。


すると先輩は私の両腕を押さえて顔を近付けてきた。



「…ほんっとムカつくなおまえ」



そう小さく呟いて先輩は私の身体に絡み付いた。


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ミント まりも @maho-marimo

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