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ノブに手を引かれ歩き出した雨上がりの世界は、太陽の光が反射して眩しいくらいキラキラと輝いていた。



「あー消えちゃったわ」


「ホントだ」


「ごめん」


「なんでノブが謝るの?」


「虹の根元連れてってやれなかった」


「ハゲたオッサン見たかったなあ」



水分を含んだ空気が気持ち良くて目を閉じて思い切り深呼吸した。


雫のニオイ。光のニオイ。虹のニオイ。



「あー気持ちいい…」



綺麗な空気をたくさん取り込んだ身体がふわりとノブに引き寄せられた。


「新しい彼氏ほしくない?」


「え」


「今日のラッキーパーソンは身近なイケメン美容師って今朝の占いでやってたの見なかった?」


「何チャン?」


「8」


「あ、ごめん、私いつも5チャン見てるから」


「俺を彼氏にすると幸せになれるってよ」


「本当に~?」


「マジのガチ」


「あ、そういえば今日のラッキーカラー『レインボー』だった…」


「はい、ありがとうございまーす!」



天気は変わる。空気は変わる。世界は変わる。



「今日みたいな雨が降ってその雨が上がって虹が出たらさ、また根元見に行こ」


「うん」


「2人ですぐ行けるようにさ、一緒にいようよ」


「うん」


「自転車では行かないよ、コケるから」


「う、うん」


「かわいい妖精かハゲたオッサンかわかんねーけどさ、」


「ぷっ…、うん」


「行ったら絶対幸せになれる気がするんだよね」


「うん」


「行かなくても幸せにできるけどね、俺ならッ」


「…うん…ありがとう」




土砂降りだった私の心。



雨が上がるとスッキリ晴れて綺麗な虹がかかった。



恋の終わりとはじまりが同じ日に来るなんて。



虹の根元には行けなかったけど、そこに何があるのか、なんとなく、少しだけ、わかったような気がした。

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まりも @maho-marimo

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