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でもすぐに、いつかどこかで見た言葉を思い出した。
虹の根元はあるけれど、探すことはできないって。
求めれば遠ざかる。
偶然によってしか見つけられない。
それを探すと罪になる。
私は少し怖かった。
なかなか辿り着かない虹の根元。
「虹消える前に行けっかな」
遠くのそこには辿り着けないよ、きっと。
「ねえノブ」
ノブは怖くないの?
「ん?」
埋まっている宝物は、掘り起こしてはいけないって。
虹の根元の話をしようとしたらノブが先に話し出した。
「つーか虹って綺麗だよな。うまそうだし」
「食べたいんだ」
「ちっちゃい時にさ、虹の根元には7人の妖精がいてその妖精が7色の光出してるって聞いた事あってさ。かわいくね?見てみたくね?」
「なにそれ素敵!見てみたーい!」
「あと小さいオッサンがいっぱいいてハゲた頭を光らせてるとかな」
「ぷっ。なにそれ。それも見てみたい」
「小学生の時、どーしても虹の根元に行きたくて兄ちゃんと自転車ですっとばしてったら派手にズッコケて大怪我した事あってさ」
「あぶな!」
「母ちゃんに怒られるかと思ったら大爆笑されて。いつか見つかるよ!会えるといいねえ妖精に!って、うちの母ちゃんちょっとやべーかな?」
「えー!いいお母さんじゃん」
「でもその “ いつか ” が今日なんかなーって。根元に行けば幸せになれるっつーじゃん?」
「……」
「あれ…やっぱり俺も母ちゃんに似て相当やべーヤツだな」
虹の根元に何があるかなんてわからないのに、自由なのに、怖がる必要なんてなかった。
ノブは宝物を掘り起こそうなんて思っていない。
ノブみたいに「虹の根元に行ってみたい」っていう純粋な気持ちだけで良かったんだ。
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