ポカパマズ

真之介

第1話


※基本的にFC.SFC版を元に書いてます。

※記憶違いについてはご容赦ください。


リメイクの発売で話題になっているドラクエ3ですが、かつてプレイした人にはこの名前に聞き覚えがあるはずです。

「ポカパマズ」

そう。勇者の父であるオルテガが最果ての村にたどり着いた時に名乗ったと言われる偽名です。


ご存知ではない方のためにざっと説明するとムオルという北の果ての小さな村を訪れた勇者はなぜか多くの村人から「ポカパマズ」なる人物と間違えられます。

聞けばその人物は昔この近辺で行き倒れていたところ、村の少年ポポタに発見され一命を取り留めてしばらくこの村に滞在したとのこと。

その人物こそは勇者の父親オルテガだったという本編攻略には特に関わらないサイドストーリーです。


さてこのエピソードですが、パッと見ただけても「……ん?」となる部分がいくつか見られます。


何より目につくのはオルテガの容姿です。初代FCからSFC版、海外版といくつかのバージョンがあるものの基本オルテガは筋骨隆々のマッチョな親父として描かれています。初代に至っては変質者の誹りも免れません。

16歳を迎えて間もない少年のあどけなさも残るピチピチ勇者と見間違えるのは至難の業です。


さらに謎なのは「ポカパマズ」なる偽名。オルテガは当時故郷アリアハンを代表するほどの英傑です。身分を隠す必要が見当たりません。


そして時系列。ポポタはポカパマズさんに故郷に置いてきた息子のように遊んでもらったと言っています。

ではここでオルテガの冒険のおさらいをしてみましょう。

16年前、オルテガは息子である勇者の誕生からまもなく、魔王バラモスの討伐に旅立ちます。

冒険の果てにオルテガは魔王の城付近の火山で魔王の部下と交戦。善戦虚しく火口に落下して命を落とす。

この報を受けた当時の勇者はグラフィック(SFCデモ)からすると高く見積もっても年齢は4歳ほど。

ポポタとの出会いも当然この数年の間の出来事と考えれば必然的にある疑問にたどり着きます。

「ポポタ歳とってない」

この時系列から考えるとポポタは少なくとも勇者と同年代、村の外に出てオルテガを助けたことからすると年上ですらある可能性が高い。

にも関わらず、勇者の出会ったポポタは推定10歳前後。まるで成長していません。最大限譲歩してもポカパマズさんとの出会いはここ2.3年の間の出来事でなければ辻褄が合わないことになります。これらは何を意味するのか。


長くなりましたが、以上がドラクエ3の謎の一つ、ポカパマズ問題の概要となります。


結論から先に言ってしまえばこの時期のドラクエのストーリーなんてガバもいいとこなんで、単純にそこまで練り込まれていなかっただけの話だと思いますが、それで切り捨てるのも勿体無いので、この矛盾を解消するためにはどのようにすればよいかというのを考察してみました。


まず、一番の問題である時系列。

ポカパマズとポポタの出会いをここ数年の間の出来事にするにはどうするか。

となると火口に落ちた時はオルテガの最期ではない。事実、オルテガは後日地下王国であるアレフガルドに落ち延びていることが判明します。

状況だけ見ればアレフガルドに続くギアガの大穴の近くにあるこの火山にも同じくアレフガルドに通じる経路があったものと考えられますが、ゲーム中にそこへの言及はありません。

ここでは火口への落下から約十年、オルテガは実は地上にいたのではないかという仮説を立てます。


瀕死の重傷を負って火口に落ちたオルテガ。なんとか九死に一生を得たものの、その回復にはオルテガの超人的な回復力をもってしても相応の時間を要した。

しかし、やっとのことで故郷に戻ってみるとなんと自分の葬式やってんですよ。しかも国葬レベルの。

民は英雄の死を嘆き、国は悲しみに包まれている。

遠く見える妻は気丈にも涙こそ流してはいないが、その悲しみは察するに余りある。息子の方はまだ状況を理解していないのか、集まった多くの民衆を物珍しげに眺めていた。

そして国王の悲嘆に暮れた眼差し。

誤解である。

慌てて出て行こうとするオルテガ。

いや、だがちょっと待て。オルテガは迷う。

たしかにここで自分が出ていけば誤解は晴れるだろう。国の士気も持ち直すはずだ。

だが現実はどうだ。勇者と言われた自分も魔王どころかその手下にすら手こずる始末。

再度魔王討伐に挑んでも同じ光景の繰り返しになるのではないか。

勇者として帰還するには自分はあまりにも未熟であった。非力であった。

加えて自分の帰還が魔王の耳に入れば、今度はこの国が危険に晒されるかもしれない。

周りにスライムとカラスくらいしかいないこの城が魔王の侵攻を受ければどうなるか? 答えは火を見るより明らかだった。

今はまだ帰るべき時ではない。

オルテガは自らを鍛え直す決意を胸に表舞台から姿を消すことを決めた。

モシャスで若き日の姿を纏う。身も心も修行の身であったあの日に戻るためである(奇しくもその姿は後の息子と酷似することになる)。そして名も変えた。故郷の土を踏むこともなく、家族の顔を見ることも許されない。一介の冒険者、ポカパマズの長く孤独な旅の始まりである。


それから十年近い時が過ぎた。

戦いの末、ついにポカパマズは北の大地で力尽きる。

もはやここまでか。瞼の向こうに故郷に置いてきた息子の顔がよぎる。

すまぬ息子よ。平和な世界を取り戻せなんだ父を許してくれ。

息子?

あれ? 息子こんな顔だっけ?

いや違う。

人だ。

人の子だ。

こんな地の果てにも人の住む場所があったのだ。

安堵から気を失ったポカパマズが再び目を覚ました時、そこは温かいベッドの上だった。


ほどなくして回復したポカパマズ、いやオルテガはついに魔王討伐の決意を固める。

研鑽は積んだ。しかし年齢的にもあとはピークを過ぎるだけである。

息子を思い起こさせるポポタに出会ったのも神の導きかもしれない。


得意のパワープレイで体一つで海を渡り山を越える。前回の火山よりもさらに魔王城へ肉博し、ついにはギアガの大穴に辿り着くオルテガ。

だがしかし、嗚呼なんたることか。オルテガはまたも魔王の手下に行方を阻まれる。

魔物の吐く炎に包まれたオルテガはギアガの奈落に吸い込まれるように落ちていった。


そして物語は新たな勇者へと受け継がれてゆく。



という話を考えてみたわけですよ。

全体の整合性がとれるかどうかはわかりませんが、なかなか悪くない考えではないでしょうか?


と、思ったら

ここに来て重大な見落としをしていることに気がつきました。

オルテガの過去についてはSFC版のデモ画面でざっくりと語られるのですが、オルテガが火口に落ちる前にムオルに辿り着く描写があります。

当然ポポタも今と同じ姿です。

そしてオルテガの姿もやはりおっさんのままです。


な ん て こ っ た 。


ポポタは何年経っても歳を取らないし、ムオルの連中はおっさんと16歳の区別もつかないボンクラどもであることが確定しました。

ポカパマズとかどっから出てきたんだ。

ふざけんな!

お前ら人間じゃねぇ!

そこではたと気がつきました。

そうだ。

人間じゃないんだ。

彼らが我々とは違う存在であると仮定すれば、この問題を解決できます。

この世界にはテドンという死者の村があります。

日中は魔物に滅ぼされた廃墟の村ですが、夜になると成仏できない村民が死んでることにも気づかずに日常をエンジョイしているホラーな村です。

あれと同じとは言いませんが、この世ならぬもの、あるいは妖精や精霊といった人間とは異なる存在なのではないでしょうか。

彼らは人間とは異なる時間感覚を生き、人間とは異なる感覚だ世界を 認識している。

例えば個人を認識するのに視覚を頼らず、魂の形のようなものを見分けているとか。

で、あるならば親子でありオルテガと同じく魔王討伐の旅を目的とする勇者が似通った存在としてみられるのも説明がつきます。

ポカパマズという名前もなにかしら彼らの言語、風習によって与えられた名前なのかもしれません。


いろいろ考えてみましたが、今回リメイクされたドラクエ3ではストーリーもより深みを増しているものと思われます。

果たしてこの問題はクリアされるのか。あるいはまたもスルーされるのか。

非常に楽しみにしております。

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ポカパマズ 真之介 @shinnosuke77

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