第6話:せのはコピー本を検討するらしい

 コピー本。聞き覚えがある者が多数であろう、手作りのぬくもり溢れるあの本だ。短編や短編集などに適しているその内容を、せのは考えていた。


 短編……完結してるの、2作あるよな……


 そう、現在別サイトさんにて連載をしている連動作品があったのだ。知っている人は知っている、うちの看板娘「こっちゃん」に纏わる物語である。

 個人的にとても気に入っているし、別サイドから見た「なで」の話も気に入っている。文字数も2作合わせたら申し分ない。


 しかし、問題がある。この作品、所謂プロトタイプ的なものであって、過去に書いた物語と現在思い付いている物語とでは設定などが変わっているのだ。


 現在考えている内容として、こっちゃんは売れないアイドル志望であり、なでは解散させられた宗教団体に纏わる青年だ。記載している文字だけでドロドロしていることがわかる。これでも一応、清々しいものにするつもりだ。


 プロトタイプはそれに纏わることが変わっているので、本編で書いた場合、その辺りのズレがある。なので、一概に「プロトタイプをコピー本にしよう!!」とはできないのだ。


 となると、やはり必要なのは書き下ろし。しかしこっちゃん達の話はおそらく5万文字くらいになるだろうことが予想されるので、コピー本にするなら、おにくと同じ製本にしたほうが良かった。


 短編。短編かァ……


 せのは腸洗浄を行う待合室で考える。絶賛内視鏡検査待ちの状態だ。やるのは2回目だし、震えてなんかないんだからね。


 書けばいいじゃない、1万文字くらいの何かをさ。そう思われるかもしれないが、とんとアイディアというものは降りて来ないのだ。


 もとより、本業であるイラストのこともあるので、その時間も割かねばならぬ。かといって、おざなりな物語を生むわけにはいかないのだ。


 コピー本……良いアイディアだが、一旦保留にするか。


 納得できないものを出しても仕方ない。それならまだ、おにくをしっかり書いて推敲したり、ポストカードの絵柄を増やすなどしたほうが良いと思った。


 文フリに出るなら、本以外に準備するものはたくさんある。

 購入して済むものなら直前でもなんとかなるが、イラストやロゴといったものは自力で製作しなければならない。


 なんとやることが多いんだ。文学フリマ。いや、2月までの短い期間になんとかしようと思う人魚が悪いのだ。現段階で考えたメモを記載しても、以下のことを行わなければならない。


【12月10日までにすること】

 ・文学フリマの注意点などを読む

 ・文学フリマ広島に参加する

 ・おにくの1章を完結させる


【12月下旬までにすること】

 ・おにくの表紙を描く

 ・おにくのロゴを描く

 ・サークルロゴを考える

 ・名刺を用意する


【1月中旬までにすること】

 ・おにくの製本発注を行う

 ・フリーペーパーを用意する

 ・ポストカードの制作をする


【1月末までにすること】

 ・作成物の確認

 ・作成物のラッピング

 ・棚などの購入

 ・試しに1度ブースを作る



 考えただけでもこんなにある。すげーや。なんでこの期間でできると思ったんだろう。

 しかし、今回抽選で落ちた場合、年1で開催される広島会場へ行けるのは「推定2026年の2月」ごろ。一年間の長いスパンでの戦いになる。


 落ちたら……まぁ、それはそれでええんやないの。


 お金を貯めることもできるし、おにくの絵や文字数も増やせるし。

 もしかしたら、こっちゃん達の話をかける時間などができるかもしれない。コピー本に適する物語も思いつくかもしれない。


 焦りは禁物。どっちに転んでもなんとかなる。内視鏡の順番が来るまで残り30分未満。待機室に座りながら、せのはそう思うことにするのだった。

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本を出したいなみおり日誌ー文学フリマに出たい人魚ログー 瀬野荘也 @s-sew

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