第37話 バーキングの報復
ベントの研究室とエアバイク改の製造工場の建造は順調に進んだ。
研究室はひと足先に完成し、製造工場も完成目前となっていた。
工場が完成しただけではエアバイク改の製造は開始できないが、そういった検討課題についてもベントの中では目処が立っている。
たまに工事の
今日もベントは研究室で作業をしていたが、その研究室の扉を激しくノックする音がした。
ベントの返事を待たずに入ってきたのは、若き勇士のクレムだった。
「ベントさん、大変です! バーキングの襲撃です! 武装した緑の勇士たちが大勢で来ています!」
血相を変えて叫ぶクレムに対し、ベントは何の変化も見せずに答えた。
「ああ、来たんですね、バーキング。わかりました。行きましょう」
ベントは机の上にあった道具を白衣のポケットに突っ込み、クレムに続いてギルドホームへ向かった。
ギルドホームの正面にはギルドマスターのグイルと受付嬢のリゼがいて、そのふたりの前方には緑のケープをまとった者たちがズラリと並んでいた。
50人以上はいるだろう。みんな鉄のフルフェイス・ヘルムをかぶっている。
ベントが姿を現すと、緑の集団の中からひとりの長身の男が前に出てきた。
「よお、ベント・イニオン」
「
「そんなんじゃねえ! 以前、リゼがバーキングの縄張りに入ったらしいな。しかもそのときにバーキングの勇士を攻撃したのがベント、テメェらしいじゃねえか。バーキングは縄張りを犯すやつを許さねえ。そしてバーキングに歯向かうやつはもっと許さねえ。バーキングの勇士となった俺がケジメをつけに来た!」
ジオスは背中に背負っていた金棒を手に持ち、力強く地面に叩きつけた。
金棒はビニールでグルグル巻きにされているが、おそらくベントにスプレーされても剥がせるよう対策しているのだ。
頭部を覆い隠す鉄のヘルムもベント対策に違いない。
グイルが前に出てジオスに対峙した。
「ジオス殿、それは不当な文句だ。ギルドにおける縄張りとは凶獣討伐など依頼に関することであって、単に通行しただけで文句を言われる筋合いはない。そもそも土地は王国のものであって、民の通行を制限する権利は領主にすらないはずだ」
にらみ合うグイルとジオス。
そんなグイルの横にベントが出てきた。
そして追撃の言葉を放つ。
「ほかのみなさんは縄張りの件でしょうけれど、ジオスの目的は追放の腹いせですよね? 縄張りにかこつけて私怨を晴らそうだなんて、あなた、勇士の
「さっきからテメェ! ぶちころぉおおおおすっ!」
ジオスが怒り狂って金棒を何度も地面に打ちつける。
グイルが顔をしかめ、ベントの耳に口を近づけた。
「ベント殿、そんなに煽っては話ができんぞ」
ベントはベントで眉をひそめてグイルに言葉を返す。
「マスター、彼らは話し合いに来たわけではありません。大将もいないのに、下の者が勝手に引き下がるわけないじゃないですか」
そんなやりとりをするふたりの前方では、ジオスが自軍の方に振り返って声を張りあげた。
「テメェら、予定変更だ。まずは俺があの白衣野郎をぶちのめすから黙って見ていろ。そのあとでテメェらがプログレスをぶち壊せ。あの白衣野郎に自分のあやまちの結果を見せつけてやれ!」
バーキングの歓声がプログレスのギルドホームを包み込む。
グイルもさすがに対話はあきらめたようで、ポケットから戦闘用のグローブを取り出して手にはめた。
「仕方ない。俺はもう引退した身だが、これでも元ランク2ndの勇士だ。プログレスは俺が守る!」
そんな決意を表明するグイルの肩にベントが手を置いた。
「マスター、彼らは私が処理するので、みんなとホームに入っていてもらえませんか?」
「何を言っているんだ。俺も戦う!」
「ここにいられると、私の攻撃に巻き込んでしまうので邪魔なんです。彼らと同じ目に
「そ、そうか……。わかった」
グイルはものわかりがいい。おとなしくリゼとクレムを連れてホームへと入っていった。
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