第25話 ベントの武器解説②
気を取り直してベントが次の質問を催促すると、フォルマンが名乗りを上げた。
「ジオスのモーニングスターが跳ね返ったのはどういうことだ?」
「ちょっと長くなりますが、一気に説明しますね」
ベントのその言葉にフォルマンがうなずいた。
アルチェとクレムも姿勢を正す。
「本当に長いですよ。覚悟はいいですか?」
フォルマンたちがうなずいたのを確認すると、ベントはひと呼吸置いてから説明を始めた。
「端的に言うと磁力なのですが、まず私はジオスのモーニングスターに白い缶のスプレーを吹き付けることでトゲの鉄球に磁力を持たせました。そのスプレーというのがスプレー式強制反発マグネタイザーです。通称、反発スプレーです。これは発熱多層膜を使った瞬間接合技術を応用したもので、噴射して外気に触れた瞬間に摂氏600℃程度まで発熱した高熱の粒子が1秒で室温まで冷え、瞬時に鉄が合金化します。この粒子は接合面と磁石面で構成されるのですが、鉄の表面で鉄と一体化した粒子はその反対側の面がオン・オフ磁石となっていて遠隔操作でオン・オフできる切り替え式の永久磁石になっています。これによってジオスのモーニングスターは私の体と反発して跳ね返ったわけですが、もちろん、私の体も磁力を帯びている必要があります。私は反発スプレーでNタイプコーティングした腕輪やネックレス、金属ベルトなどを身に着けていました。モーニングスターに施したスプレーもNタイプコーティングなので、鉄球が接近してきたときに磁石が反発してジオスのほうへ帰っていったというわけです」
クレム、フォルマン、アルチェは黙ってベントの説明を聞いていたが、白目を剥いて口を半開きにしていた。
リゼは頭から湯気を出して目を回している。
グイルは腕を組んで目を閉じていた。おそらく途中から聞いていないだろう。
「あ、あ、あの、最後にモーニングスターがジオスに向かって飛んだのは……?」
情報屋魂がそうさせたのか、フォルマンがつらそうにしながらも力を振り絞って最後の質問をした。
ベントはやはり淡々と答える。
「さっき言ったように反発スプレーで磁石化したものは磁力のオン・オフを切り替えられるのです。私はオフにした状態でトゲの鉄球を拾い、それからオンにすることで磁力を復活させました。私は地に足をつけて踏ん張っていましたが、鉄球は私の手の上で自由な状態になっていたので、オンになった瞬間、磁石が反発して鉄球のほうが飛んだというわけです」
フォルマン、アルチェ、クレムは自分の頭をバンッとテーブルに叩きつけ、そのまま動かなくなった。頭から湯気を出している。
リゼはもっと早い段階でその状態になっていた。
グイルはおそらく寝ている。
ベントはグラスを口に運んで傾けると、それを静かにテーブルの上に置いた。
そして立ち上がってから言った。
「理解できなくても気にする必要はありませんよ。理解できる人のほうが少ないので」
ベントは5人を残し、ひとりで歓迎会をお開きにしたのだった。
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