第四章 元カレと元カノ
沙月を見送った後、もうひと眠りした俺は昼頃に目を覚ました。
「…………目覚めの悪い夢だな」
そんな独り言を漏らしながらくぃーと大きく背伸びをしてからベッドから起き上がる。
起き上がってからしばらく夢に見たことを呆然と思い出す。
…………あの後、俺は彼女に何と言ったのだろうか? あのまま何も言わずに別れたのだろうかと古い記憶を呼び起こそうとするがなぜかその辺の記憶が曖昧なせいで上手くいかないかった。
何度も試してみるが、まったく上手くいかなかったので諦めて別のことをする。
と、ベッドから立ち上がったところでぐっぅーという腹の虫が部屋中に鳴り響く。
「…………さて、とりあえず
何か買いに行くか」
と思い立ち、適当に着替えを済ませて玄関を出る。
「あ、………」
同時に隣の扉が開き、訊き慣れた声が耳朶を打つ。
ちょうどタイミング良く二人同時に出てきてしまったようだ。
「…………」
特にお互いの挨拶もせずに他人のふりをしてそれぞれ歩きだす。
エレベーターに向かう俺を見た沙月が。
「ちょっと何でついてくるのよ!」
隣を歩いている沙月が心底、嫌そうな顔で訊いてくる。
「仕方ないだろ? エレベーターが一つしかなくて方向も同じなんだから」
「階段あるんだからそっちから行ってよ」
何とも身勝手な発想だろうかと思っていると、「ちょっと訊いているの? 無視しないでよ」
怒った沙月が俺を睨みつけてくる。
それを泰輝はすかさず「お互いに干渉しないんじゃなかったのか?」と言い返す。
「これは思わず……って―――。何言わせているの! 次からはないから」と言ってそそくさと歩いて行ってしまった。
沙月がエレベーターに乗ったのを確認してから次のエレベーターが来るのを待ってから下に降りてマンション内にあるコンビニで適当に弁当を買って部屋に戻る。
その途中で隣の沙月の部屋を通るとどうやらまだ帰っていないようだった。
お隣に引っ越してきたのが元カノでした。 赤瀬涼馬 @Ryominae
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます