第三章 終焉のカウントダウン
それから順調に付き合っていき四回目のクリスマスを迎えようとしていた。
「…………なあ、沙月」
「どうしたの? 昂輝くん」
俺の問いかけに太陽のように燦然と輝く笑顔のような笑顔を向ける沙月。
「そろそろクリスマスだし何か欲しい物とかないのか?」
出来るだけ何気なく訊くと。
かれこれ三年ほど付き合っているせいか、俺の考えていることはお見通しのようで不敵な笑みを浮かべた沙月が「さぁ―――なんだと思う?」と逆に訊いてくる。
そんな彼女を見ながら肩を並べて歩いていく。
「それで結局何が欲しいんだ?」
改めてそう訊いてみるが「それは泰輝君が一番よく分かっているじゃないかな…………?」
なぜか妖艶な笑みを浮かべた沙月がそんなことを言ってくるだが、まったく想像できずにいるのであった。
それからしばらくしてクリスマスシーズンが近づいてきた。クリスマス当日。
サプライズで彼女である沙月にクリスマスプレゼントを渡すために彼女と仲が良い友人に頼んでプレゼント選びに付き合ってもらっていた。
「悪いな、忙しいのに付き合ってもらって―――」
俺の隣を歩く金髪で派手なメイクをしている小柄な少女にそう声かけながらスマホのマップを見る。
――――彼女の名前は桜島野乃花、大学内で美人で高値の花と言われており、つい最近開催された学内のミスグランプリコンテストでも堂々の1位を獲得しており、自他ともに認める美少女だ。
「全っ然良いよ。篠原くんにはいつも沙月がいろいろとお世話になっているし、これくらい朝飯前だよ」とニコニコとした人懐っこい笑みを浮かべる。
さすが大学内でも絶大な人気を誇っている人気者は心も広くて助かるなんてことを考えながら目的地を目指して歩く。
しばらく歩いてから目的のお店に入って紗月に似合いそうなものがないか見繕う。
数十分ほど店内を見て回りようやく沙月にピッタリなプレゼントを見つける。
目に入ったのは薔薇を模様したダイヤのネックレスだった。
選んでお店を出る。
するとそのタイミングでいきなり野乃花がギュッと抱き着いてくる。
「おい! 何するんだ? こんなところを沙月に見られたら大変だから早く離れてくれ…………」
そう言って力づくで引き剝がそうとしたときに後ろでガタンと何かが落とす音が聞こえてきた。振り返ってみるとそこには、信じられらないといった顔をした沙月が愕然とした様子で立ち尽くしていた。
「えっ―――泰輝くん。どうして野乃花と一緒にいるの?」
「ち、ちがうんだ。これには理由があって――――」
急いで弁解しようとするが――――。
「な、何が違うの…………?」
頬からポロポロと大粒の涙を流した沙月がそう尋ねてくる。
「これは沙月にクリスマスプレゼントを一緒に選んでもらっていただけで」
助けを求めるように隣にいる野乃花に視線を向けるがあろうことか彼女ははどんでもないことを口にする。
「そうだよ。あたし、昂輝くんとデートしたの」
妖艶な笑みを浮かべてそう言う野乃花。
「な、何言ってるんだ! 俺たちは沙月のクリスマスプレゼントを選びに――――」
そこまで言いかけたところで見せつけるように野乃花が腕を絡ませてくる。
「…………」
「沙月! これは違うんだ、誤解なんだ」
走り去る沙月の大声でそう言うが彼女の耳には届かなかった。
その光景を見た沙月は何も言わずに走り去ってしまった。
「桜島! どうしてあんなこと言ったんだよ。沙月を勘違させたじゃないか」
と、怒鳴りつけるが、本人はどこ吹く風でケロッと様子で―――――。
「私は勘違いじゃなくて、本気でそうなるようにああ言ったんだよ」
悪びれもなくニコッと笑みを浮かべながら言ってくる。
「いったい、どういうつもりなんだ」
鋭い声で追及する。
「だってわたし、泰輝君のことがずっと好きだったの。だからどうして振り向いてほしくて――――」
さっきまでのおちゃらけた態度とは打って変わって今まで見たことがないくらい真剣な表情でそう訴えかけてくる。
「だからと言ってあんなこと許されるはずないだろ」という泰輝に野乃花はさらに驚きの発言をする。
「でもどのみち泰輝君のことは狙っていたからさぁ、いずれはこうなる運命だったんだよ。きっと…………」
なぜか、決定事項のような口ぶりで話す野乃花。
「お前…………まさか初めからそのつもりで―――――」
絶句する泰輝に向かって野乃花はまたしても驚きの発言をする。
「ねぇ泰輝君…………沙月なんかと別れてさぁ、私と付き合ってよ」
(何を言っているんだこの女は、友達の彼氏を誘惑するなんて気は確かなのか?)
彼女の常軌を逸した行動に驚きを通り越してもはや呆れている泰輝。
しかしそんなことはお構いなしにと言わんばかりに野乃花はどんどん迫ってくる。
「…………いい加減してくれ!! 知らなかったよ。桜島がこんな不潔な人間だったとは――――こんなことして沙月に申し訳なくないのか?」
興奮気味に捲し立てる泰輝を見た野乃花は「…………っは!? そんなことどうでもいいに決まってんじゃん。だってこうすれば今までの男はみんな墜ちてきたんだから…………」
まるで同一人物とは思えない発言のオンパレードに強い嫌悪感とおぞましさを感じる。いくら後悔しようと怒ってしまったことはやり直すことはできない。
自責の念に駆られながら立ち尽くすことしかできない泰輝だった。
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