あさごはん

雛形 絢尊

第1話

小窓の外から木が顔を出す。

その近くでは我が物顔で湯気が立ち始めた。

溢れんばかりの水蒸気がより、空気を温める。横には熱を帯びたフライパン。

擦れるような音と油が跳ねる音が聞こえる。

そろそろ頃合いだろうか、

キッチンの適当な場所で卵を割る。

ぱちぱちと音を上げながら

卵の白身が固形状になっていく。

やかんの蓋がかたかたと動き始める。

その少しの間でも下準備、

冷蔵庫から準備していたサラダを取り出す。

緑、オレンジ、白の彩り。

透明な容器に盛られている。

ドレッシングはフレンチ系、

少し酸味のある、独特の味。

そろそろだ、と沸騰した

やかんの火とフライパンの火を止める。

上手く盛り付けるのだ。

円形の画用紙に絵を描くように。

皿の上部には少し焦げのついた

イングリッシュ・マフィンがふたつ。

皿に粉が溢れている。

その横にはジャーマンポテトの山脈。

下部には少し焦げた

長く伸びた太々しいベーコン。

その厚さはハードカバーの

長編小説ほどの厚さである。

油で光沢を帯び、

ブラックペッパーが星座かのよう。

沸き立つような肉塊の放つ匂いは食欲を唆る。

その上に先ほどの目玉焼きを覆い被せる。

たまごの焼いたあとの匂いは美味しい。

やかんの蓋をうまく抑えながら、

お湯はくぐもった声を出す。

ティーパックが滲み出し、

金魚のような儚さに包まれる。

しばし、待って行き届くのを待つのだ。

引き出しからフォークとナイフを取り出す。

銀色が朝と混じり、煌めいた。

お気に入りのランチョンマットを敷いた上に、まずは大皿を乗せる。

その右斜め上にサラダを置く。

そうして反対側には、

ティーパックを外した先ほどの紅茶を置く。

朝から食卓にミッキーマウスを作り上げた。

私は椅子に座り込み、いただきます、と言った。

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あさごはん 雛形 絢尊 @kensonhina

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