クレオメの恋
憑弥山イタク
クレオメの恋
初恋というには、随分と遅い。けれども30歳を迎えるまでに恋をしたのだから、まだ手遅れではなかったのだろう。
ただ、恋をするには、相手は随分と若い。何せ私が恋心を抱いたのは、同じマンションに住む男子中学生。対する私は、既にお酒が飲める年齢である。
手を出せば罪になる。それは分かっている。分かっていても、私の手は彼へと伸びる。その度に私は自身の手を抑え、彼の代わりに私の下腹部へ手を伸ばす。
自慰行為とはよく言ったものである。何せ、彼に触れることさえ叶わない自らを、誰でもない自分自身で慰めるしかないのだから。
ただ、人とは飽きる生き物である。愉しみに似せた自慰など、やがては飽きる。
もう、彼を一方的に想うだけなのは、飽きた。
時間を費やした。何秒、何分、何時間、どころではない。何日、何週間も費やした。寝る時間さえ削ぎ落として、合法的且つ作為的に彼と接触する手段を模索した。
まずは、同じマンションの住人同士として、彼の家族と接触。コミュニケーションを深め、顔を合わせば世間話……といった関係にまで持ち込んだ。そしてその際、私は勝機を得た。
彼の母親曰く、どうやら彼は勉強が苦手で、成績が伸び悩んでいるらしい。このままの成績が続けば、控える高校受験に支障が出るかもしれない。
ならば、と、私は彼の母親に提案した。
私が彼の家庭教師を務めよう、と。私は普段、仕事として書き物を積んでいる。基本的に家の中で仕事をする為、家庭教師として活動する時間は容易に作れる。
母親の信頼は既に得ている。故に簡単だった。僅かな隙さえ作ってしまえば、蛇は容易く通り抜ける。私は蛇ではないが、信頼に伴う油断を通り抜けるのは極めて簡単だった。
よって、私は彼の家庭教師になった。自己を過大評価するつもりは無いが、中学生に勉強を教える程度は難なくこなせる。彼の学力を即座に理解し、彼の脳に合った教育を進めた。
思春期故か、最初は少し緊張していた彼だが、勉強を経由したコミュニケーションを続ける中で、徐々に彼のガードは削れていく。休憩中の会話も増え、目を合わせてくれる回数も増えた。さらには、チラチラと私の胸を見てくれる回数も増えた。家庭教師に入る度に、少しばかり薄着をしていたのが功を奏した。
ここまでくれば、後は、ジワジワと物理的な接触を増やすだけである。
シャーペンを握る手に、不意に私の手を当てる。教材に指を乗せる時に、偶然を装って乳房を肩に乗せる。少し気温の高い日は、ノースリーブを着て、裸足で家に上がる。少しずつ2人の物理的距離を縮めていくことを前提に、確実に教育を施していく。
暫くした頃。母親が不在の土曜だった。勉強の最中、彼のズボンの股部分が膨らんでいることに気付いた。そう、機は熟したのだ。
休憩しようか。そう切り出し、私は彼を後ろから抱きしめた。汗をかいた彼の香りが、ゼロ距離で感じられる。まだ若く、細いけれども、女体とは違う硬さのある体。彼の体を抱くと、私の中にある性欲メーターもムクムクと溜まっていき、いつ爆発してもおかしくない状態にある。
ただ、私よりも先に、思春期男子のメーターの方が脆かったらしい。彼の股間の膨らみはさらに顕著になり、腕に伝わる心音が早くなった。
恥ずかしがっているのか、或いは昂っているのかは、未だ分からない。とは言え、私に抱きつかれた程度であんなにも大きくしてしまうなんて、嬉しくもあり、何より可愛い。
彼の耳元で、股間の膨らみを指摘するように囁く。すると、彼は体をビクンと震わせ、咄嗟に両手で股間を隠した。
まだ、本格的に踏み込むのは早いか。彼が恥ずかしがっている間は、まだ私が満足できるはずが無い。なので今日は、擬似的な行動で締めくくる。
椅子に座った彼の、脚の上に乗ってみる。所謂、対面座位の形である。彼は私よりも背が低い為、対面座位になれば、彼の顔面は私の胸に埋もれる。今度は前から彼を抱きしめ、擬似的なセックスと共に、彼に私の香りを楽しんでもらう。
布越しでも、彼の膨張した股間が感じられ、それが期せずして、私の股に当たっている。今すぐにでも服を脱がして、本気でシたいくらいだが、まだ早いことは分かっている。
互いの股間を擦り合わせ、前から抱きつき、互いの体を感じ合う。相手が中学生である以上、私の中には多少の罪悪感がある。が、そんな罪悪感さえ性欲に変わってしまい、今、私は酷く興奮している。
きっと彼も、私で感じてくれている。
今日は服を脱がないが、いずれは脱ぐ。そして彼の家ではなく、私の家で、彼の童貞を卒業させてあげるつもりである。
それまではひとまず、真面目な家庭教師を演じることにしよう。
クレオメの恋 憑弥山イタク @Itaku_Tsukimiyama
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