██県██町のキャンプ場

旅行ジャーナリスト 我妻美乃梨⑦

　編集長、ちょっといいですか？ いえ、そんな大した話じゃないんですけど、実は…ちょっとお休みを頂きたいなと思いまして。

　ええ、5日間ほどで考えています。いやいや、ハワイとかリゾートとか海外旅行じゃなくて、実家に帰ろうかと。

　そうなんですよ、母に顔を見せてこようと思って。電話で話すたびに、疲れてない？って酷く心配されまして。

　まあ確かに疲れてるし、寝不足なのは事実ですけど、編集長だって締め切り前の徹夜（てつや）、相当多いじゃないですか。それに比べたら私なんてまだ元気なほうです。

　そういえば、編集長って実家に顔出してます？ いつも忙しいから、もう親御さんも忘れてたりして。

　ですよね、え？ お母さんから年賀状でちゃんと生きてますか？って確認がきた？ それは流石に寂しすぎます。ちゃんと帰ってあげてくださいよ。親不孝者がここにもいましたね！ って、人のこと言えないか。

　それで、休暇の話に戻るんですけど、ちゃんとリフレッシュして、帰ってきたらまたバリバリ働きますんで！それと、休暇明けには永見さんと一緒に●●●キャンプ場に行こうと思っています。

　そうなんですよ、責任者の齋藤さんには断られちゃいましたけど、編集長のアイデアの通り、今回は取材というよりあくまで私用の旅行っぽくして、少し様子を見てこようかと思ってます。

　ほら、編集長も読者からの反響、見ましたよね？ 手紙とか口コミとか、私にはあまりにも気になることが多すぎて…。どうしても自分の目で現地の空気を感じてみたいんですよ。

　え？ 永見さん？ こう見えて頼れる方ですよ。いや本当ですって！ 昨日も話したら、意外とノリノリで協力してくれるって仰ってくれました。永見さんと行けって言ったのは編集長なのに、永見さんの心配してどうするんですか！

　確かに仕事はちょっと抜けてるところありますけど、現場に行ったら頼もしいと思います、彼。いやいや、大丈夫ですって！ 万が一、齋藤さんに怒られても、私たち、ただのキャンプ客のフリしてる予定ですから。

　まあ、編集長みたいにごまかしが上手なわけじゃないですけどね。そこは永見さんの人の良さでカバーする作戦で行きます。もしかして、私が取材失敗するのを楽しみにしてません？ その顔、絶対、面白がってますよね！

　でも、キャンプ場の記事ってやっぱり大事ですよね。なんだかんだで反響が大きかったですし、濃密な内容にしていければと思ってます。

　そうそう、実際に現地に行けばもっと魅力的な部分が見つかると思うんです。ええ、齋藤さんが警戒する理由も分からなくはないですけど、そこまで拒否されると逆に気になっちゃいますよね。

　何か隠してるのかもしれないし、単に面倒だっただけかもしれないし…

　え？ 編集長もついてくるんですか？ いやいや、それはさすがにお断りです。編集長が来たら絶対にキャンプ場の人、余計に警戒しますって！

　はい、じゃあ永見さんと日程調整して、準備進めますね。まずは休暇でリフレッシュしてきます。編集長もちゃんと休んでくださいね？ 親御さんが心配して年賀状で生存確認してくるくらいなんですから。

　では、失礼します。休暇と取材、よろしくお願いいたします！