20XX.12.23 あなたの想いは引き継いだ。

 コインチョコに、ジンジャークッキーに、いちごマシュマロ。

 クリスマスのイラストの入ったパッケージは、どれもとびきりかわいくてハッピーだ。

 あたしはそれをピカピカしたオーロラカラーの小分け袋にバランスよく詰めて、赤や緑や金色のモールでどんどん閉じてった。

 最後にシールを貼ったら完成。ツリーにスノーマンにトナカイに、それからサンタクロース。いかにもクリスマスって感じに仕上がった。


 ちょっと多めに作りすぎちゃったかも。明日と明後日の分とはいえ。

 と、そこまで考えて、心がどんより暗くなる。

 明日。あたし、明日の夜までしか、ここにいられないんだ。

 あのメッセージをガン無視して居座ったら、当局が乗り込んできて無理やり連れ戻されることになるみたいだった。そうなったらこの時代への行き来はもちろん、二十二世紀に帰った後の自由だって許されなくなるかもしれない。


「リンカさん、なんか今日ちょっと元気なくない?」

「えっ? そんなことないですよー! すいません、昨夜変なもの食べてお腹壊し気味なんです、あはは」

「そ、そう……お大事にね」

「はーい、ありがとうございます!」


 いけないいけない、マスターに心配かけちゃう。

 マスターに、何をどこまで打ち明けたらいいのか、分からなくなってしまった。

 だけど明日までしか来られないようなら、全く説明しないわけにもいかない。

 だいたい、二十五日にケーキを食べる約束だってしてるのに。

 もう頭の中がぐちゃぐちゃすぎて、あたしはただただ手だけを動かして、貴重な時間をじりじりと消耗した。


 ああ、もう。

 あれこれ悩むなんて、あたしらしくない。

 一つ確実に決めてるのは、クミコさんのやり残したことだけは、必ずやり遂げるってこと。


 マスターがカウンターの向こうで作業してるのをそれとなく確認してから、あたしはバックヤードに入った。掃除でもするふりをして、いろんなものがこまごま置かれた棚を覗いてみる。

 クミコさんから聞いた話に加えて、日に日にくっきりしてきたあたしの中の前世の記憶を頼りに、彼女の忘れ物を探す。覚えの通りにちゃんと見つかって、ホッと胸を撫で下ろす。

 あのかわいい花瓶がしまってあった棚の隣、物入れの引き出しの奥の奥。

 宝石箱みたいに綺麗なクッキーの缶の中。

 まるで宝物を隠すようにして、それはあった。

 あたしはそれを大事に大事に両手で包み込んで、静かに息を吐く。


 クミコさん、見つけたよ、大丈夫。

 あなたの想いは引き継いだ。

 きっとあたし、そのために二十二世紀からやってきたんだから。

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