第7話 ライブハウス会談 略してRHS会談

「あれ?もう開いてましたか!お疲れ様でーす」


 入ってきたのは凛ではなく、また他の女であった。

 ロング髪のスタイルの良さそうな娘。この子あれだ。デンパライトのライブでボーカルしてた娘だ。

 彼女が入ってくると栗松さんはすぐ反応して彼女に近づいた。


「お、歌帆かほ今日シフトだったけか?」

「うんそだけど。なんで悠美ゆうみもいるの?」


 すると悠美ことエロゲギャルが口を開いた。


「単純に早めに来ちゃっただけ」

「で、この人は?」


 彼女は俺を指差した。


「さあ?ただのエロゲーマーよ」

「女の子なのに?」

「その人男だって」

「え?」


 その娘はそのことを聞くや否や、完全に固まってしまっていた。


「もうこの展開飽きました」


 俺は苦言を呈した。


*****


「つまり、二人はそのデンパライトのメンバーというわけで?」


 ライブハウスのカウンター席に俺と悠美は腰掛け、そしてバイトである歌帆はカウンター奥でドリンクを準備しているという状況の中、俺は二人にそう尋ねた。


「うん、確か貴方、昨日のブッキングライブの時いなかったっけ?」

「いましたよ。なんならそこのステージでギターを弾き鳴らしていました」

「なんてバンド?」

「正規メンバーではなく、サポートだったんですが……MEKALICっていうバンドの」


 すると、悠美は目を見開いた。


「MEKALIC!人気バンドじゃない!なんでそんな人気バンドのサポートに?」

「普通にリーダーの方から頼まれて。『今度のライブではギターの音がもうちょい欲しいから』って」


 悠美は手を口元に置いて固まっている。


「はい、ドリンクねー」


 その中、俺の目の前のカウンターテーブルに一杯のオレンジジュースが置かれた。

 そして、その奥には満面の笑みをした歌帆がいた。


「俺たち頼んでないんだけど」

「でも、やっぱり何か話すんなら飲み物の一つあったほうがいいじゃない?ねぇ?店長」


 すると、店の奥から声がする。


「まぁ、そうだな。でもちゃんと金は払えよ」


 マジかよ……俺は慌てて鞄の中から財布を漁った。


「ったく、汚ねえ商売してんなぁ……店長!その代わり今度のチケットノルマ免除なー」

「そんなことできると思ってんのか⁈」


 そんな変な会話ががらんとしたライブハウスで行われるなか、俺は自腹きって入手したオレンジジュースを一口飲んでは、一人の女の到着をハラハラとしながら待っていた。


*****


 少し話が落ち着いた頃……まだ高橋が到着しなくて退屈していた俺は同じくバイトの仕事が現在一通り終わって暇している歌帆とついさっき栗松さんから貰ったエロゲを手持ちのノーパソで起動しようとしていた悠美に聞くことのできる空気感となった。


「オタク系の楽曲を弾くバンド……つまりメインはコピーバンドでやってるのですか?」

「そうね……基本はカバーばっかだわ。たまーにオリジナルも作ったりするけど、あ、アルバムいる?」


 悠美は懐からCDケースを取り出した。


「あ、結構です」

「なんでよ」

「金ないんで」

「絶対さっきエロゲ買ったからでしょ!」


 悠美はそこに転がっている俺の買ったブツが入っている袋を指差した。

 いやん。はずかちい。

 そして、次は歌帆が話し始めた。


「大体は私がボーカル、そしてそこの悠美がドラム、あとギターとベースもいるわ。四人の男子禁制ガールズバンドよ♪間違っても入ろうだなんて思わないでね?」


 なんか……笑顔なんだけどこの言葉の圧。

 この人結構怖いな。


 それにしても……そうかデンパライトにはあと一人ベースがいたのか。なんかちっこかったような気がしたけど……あんまり覚えてねぇや。


 そんなことを考えていた時。俺はふと思った。

 この二人に昨日のこと……高橋にバンドの加入を勧められたこと。

 そして、彼女のお家にお邪魔して……そこで色々あって……今に至るということ。


 これを話したほうが良いのだろうか。


 結局は知られることになるだろうこの事実なんだけど……肝心なのはその知られるタイミングである。

 バンドの加入を勧められたことまでは大丈夫なのだが……その後のことはちょっとヤバい。

 もろにあいつの裸見ちゃったし。


 俺が悶々と考え込んでいると……突如の俺のスマホのヘビメタな着信音が鳴り響いた。


「どんな趣味なの……?」


 という悠美の呆れ顔を見ながら俺は電話に出た。

 というか……バンドマンだったらヘビメタくらい聴くでしょ……。

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ラブコメデンパガールズバンドライフ 端谷 えむてー @shyunnou-hashitani

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