第12話 勇者、お城に呼び出される





 イヴを抱いてしまった。


 まあ、抱いてしまったものは仕方ないので、勇者パーティーに置いておくことにする。


 ティオも気にしてないみたいだしな。


 そうこうあって俺たちは王都へと帰ってきて、一週間が経った。


 冒険者ギルドで腐っている依頼を適当にこなして金を稼ぎ、月一でティアラちゃんとズッコンバッコンするために『女神の安息日』に通う。


 そんな日常を過ごしていた時、何やらいきなり呼び出しを食らった。


 誰からの呼び出しか、だって?


 勇者である俺を呼びつけることができるのはこの国でただ一人、国王のアレクサンドリア三世のみである。


 俺は散歩がてら王都の中央にある城へ向かい、王様に謁見していた。


 ティオとイヴはいない。


 何やら二人でやりたいことがあるとかで、今日はお休みなのだ。



「で、なんかあったのか、王様」


「いや、なんというかのぅ。教会の方から苦情があったんじゃ」



 教会。


 そう言われて一般的に人々が想起するのは、女神教の存在だろう。

 女神様を信仰する教会は、昔から様々な面で勇者に支援を行っている。


 しかし、苦情を言われるようなことをしたような覚えはない。



「どんな苦情だ?」


「それがのう、お主が教会の聖女を蔑ろにしたと騒いでおるようなのじゃ」


「聖女?」


「ほれ、お主のパーティーにいたじゃろ。おっぱいのでっかい娘」


「あー、いたいた」



 思い浮かぶのはパーティーのヒーラーを担っていたレティシアだ。


 アッシュに陰湿な嫌がらせしてたみたいだし、ヤらせてくれないし、そもそも回復役とか要らないから追放したんだったな。



「別に蔑ろにはしてないぞ? 要らないから追放しただけだし」


「そ、そうか。しかし、相手は蔑ろにされたと受け取って今後のお主への支援を打ち切ると言ってきた」


「ふーん。まあ、何とかなるだろ」


「楽観的じゃなあ、お主は。まあ、儂としても前々から教会が政治に口出ししてきて鬱陶しかったし、これを機に距離を取る。今後は儂のポケットマネーで支援する故、承知しておいてくれ」



 ん? 王様が支援してくれるのか?



「いいのか? 『女神の安息日』に通う小遣いなくなっちまうんじゃねぇか?」


「う、ううむ……」



 王様は『女神の安息日』のヘビーユーザーだ。


 ほぼ毎日、政務の合間にお店に通いまくっているため、毎月の支払いは結構凄い。


 王様の月のお気遣いは王妃様に管理されているらしいし、俺の勇者としての活動を支援している余裕などないと思うが……。



「そ、それが妻にバレてしまってのぅ。儂のイチモツのために使うくらいなら勇者を支援しろとブチギレられてしまったのじゃ」


「あーあー、王様なのに怒られてやんの」


「故に!! これは仕方なく!! お主に支援金として与えるのじゃ」


「了解了解」


「……言っておくが、儂の小遣いで『女神の安息日』に通うことは許さんぞ」


「ギクッ」



 ちくしょう、せっかくティアラちゃんのイチャラブ濃厚エッチして過ごせると思ったのに。



「さて、本題じゃが」


「え、今までの本題じゃなかったのか?」


「うむ。実はもう一つ問題があっての」


「……なんだ?」



 さっきまでとは打って変わって、真面目な声音で言う王様。


 俺も自然に背筋が伸びる。



「……実は、帝国が勇者同士の親善決闘を申し出てきたのじゃ」


「帝国? 帝国って、お隣のエルデン帝国か?」


「うむ。そのエルデン帝国じゃ」



 エルデン帝国。


 それは俺が活動するアストラダム王国の隣に位置する軍事国家だ。

 二人の勇者を抱える国で、総合的な戦力はかなり高い。


 帝国という名の通り、周囲の国から戦争で土地を奪って発展してきた地塗られた歴史があり、王国とは仲が悪い。


 というか最悪だ。


 王国と帝国は昔からドンパチやっているため、まさに犬猿の仲と言っていい。


 と、前にティオから聞いたことがある。



「なんで親善決闘?」


「それがのぅ。真偽は不明じゃが、何でも帝国に三人目の勇者が誕生したらしいのじゃ。おそらくは公の場で国力の差を見せつけたいのじゃろうが……」


「強いのか? その三人目の勇者は?」


「分からん。まだ『女神の試練』を終えたかどうかも判明しておらん」


「ふーん」



 勇者は一人ではない。


 現在活動しているのは俺を含めて七人で、そこに新しい一人が加わるかも知れない。


 そのうち三人が帝国にいるのだ。


 まあ、人口の多い国ほど勇者が誕生する確率は高い。

 帝国に三人目の勇者が誕生したのは偶然と思っていいだろう。



「で、俺より強いのか?」


「……少なくとも勝算があるから親善決闘に誘ってきたのじゃろう」


「へぇ、面白いじゃねぇか」



 勇者と言っても実力はピンキリだ。


 少なくとも、帝国が元から抱えていた勇者二人はまとめて相手しても俺の方が強かった。


 まだ俺が『女神の試練』を終える前だったので、今ではその実力の差も大きなものになっているだろう。


 その上で親善決闘を申し出てきたなら……。



「上等だ。やろうぜ、それ。場所は?」


「三ヶ月後に帝国で行うそうじゃ。ただ、普通に戦うわけではないらしい」


「あ?」


「何でもパーティーとしての実力を競い合いたいとかで、五人の仲間を集めて来いと言われてしまっての……」


「えぇ、面倒だな」



 現在、勇者パーティーには俺、ティオ、イヴの三人しかいない。


 あ、いや、サヤも頭数に入れていいか。


 困った時はベルを鳴らせばいつでも駆けつけるって言ってたしな。


 しかし、それでも現在の勇者パーティーには四人しかいないので、帝国と親善決闘をするためにはあと一人を仲間にしなくてはならない。


 俺は一度宿まで帰り、ティオに相談することにした。


 すると、以外にもあっさり五人目が見つかった。



「それなら頼れそうな人がいるよ」



 そう言ってティオが外出すること一時間。


 彼が連れてきたのは『女神の安息日』の店主、ロザリアさんだった。



「え、ロザリアさん!?」


「なんだい、アッシュの坊や。あたしじゃ不満かい?」


「いえいえ!! 滅相もない!!」



 俺はロザリアさんのデカイおっぱいを見ながら首を横に振った。

 こんな美女が仲間になるとか、親善決闘の話を前向きに考えて正解だったな。



「ところでロザリアさん、この後俺の部屋にきませんか?」


「遠慮しとくよ。アッシュの坊やに抱かれると、ティアラに嫉妬されちまうからね」



 それは残念。


 こうして俺たちは何の心配もなくエルデン帝国との親善決闘のために王都を出発、帝都を目指すのであった。






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「煩悩は不幸の源、無欲こそが世界を救うのです」


ア「賢者時間に書いてやがるな……」



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